第73回全日本バレーボール高校選手権(春高バレー)決勝が1月10日、東京体育館で行われた。今季最初で最後の公式戦。男子は、前年覇者の東山(京都)が3回戦で棄権とアクシデントもある中、東福岡(福岡)が優勝した。優勝した。(文・田中夕子、写真・中村博之)

頼れるエース・柳北がチームを引っ張る

1、2年生主体のチームを支えたのは、頼れる3年生たちだった。

最後の1点を決めたのは、エースの柳北悠李(3年)。最高到達点345㌢、高校生では圧倒的な高さを誇る柳北がたたきつけたバックアタックが決まった瞬間、東福岡の5大会ぶり3度目の優勝が決定。最後の1点を迷わず柳北に託したセッター、近藤蘭丸(2年)が言った。

コートに立つ唯一の3年生エース柳北

「(決勝で対戦した)駿台学園は悠李さんを絶対マークしてくると思った。裏をかくために速攻をどんどん使って行こう、と話していたのに自分がスパイカーを活かせなくて、結局悠李さん頼りになってしまった。ブロック2枚、3枚来ても悠李さんが全部決めてくれて、頼れるエースだったので、この試合も勝つことができました」

コートに立つ3年生は柳北だけ、近藤や坪谷悠翔(2年)など東福岡は1、2年が主体のチームだ。

だがそれはあくまで試合だけの話であり、普段の練習や大会に臨むまでの準備。チームを支え、強くしてくれたのは3年生がいたから。近藤には、そう感じる理由があった。

心の支えになったのは、試合に出ない3年生たち

今年は新型コロナウイルスの影響でインターハイ、国体などほとんどの公式戦が中止となり、試合の中でコンビの精度を確認することもできず、緊急事態宣言の発令も重なったことから部活動が制限された3月末から5月にかけては全体練習もままならない。

6月からようやく全体練習が再開されたが、ボールの感覚やタイミングがつかめず、苦戦する近藤の不安を取り除いてくれたのは、普段試合には出場することのない3年生たちだったと言う。

思わずガッツポーズが出た近藤

「全体練習が終わった後、キャプテンの(川波)虎太郎(3年)さん、(園田)唯斗さん(3年)、マネジャーの中西(臣介 2年)が自分のトス練習に付き合ってくれました。ボールを出してくれて、打ってくれる。その練習をやってきたおかげで、いいプレーはできなかったけど、自分が春高でトスを上げることができました」

思わずガッツポーズが出た近藤

迷わず「悠李さんなら決めてくれる」

10年連続出場の強豪ではあるが、センターコートに立つのは優勝した16年以来で、今いる選手は全員が初めて。

準決勝は「緊張して迷惑をかけた」と近藤は振り返るが、その状況を助けてくれたのがベンチにいる3年生たちであり、コートでスパイクを決めてくれた柳北だった。

だから、最後の1点は迷わず「悠李さんなら決めてくれる」と託し、それを豪快に決める柳北の姿を見て、刺激を受けたのは近藤だけではない。同じアウトサイドヒッターで柳北の対角に入る坪谷も同様だった。

喜びをあらわにする坪谷

決勝の駿台学園高戦でもチームトップの39得点をたたき出した柳北に対し、自らは9点。それでも相手には十分プレッシャーを与えたが、来年はエースとして活躍が期待される。

勝利が決まり思わず崩れ落ちるメンバー

「あれが3年生の姿だ」

「悠李さん頼みのバレーになってしまって、マークがついている中でも悠李さんが決め切ってくれた。あれが3年生の姿だ、と思ったので、それを来年は自分たちがしなきゃいけないと思います」

コートの内外でチームを支え、引っ張ってくれた3年生たちの背中を追い、これからは自分たちが新たな歴史をつくる。最強軍団になるべく、また新たな挑戦が始まる。

1954年創部。部員28人(3年生5人、2年生11人、1年生12人)。2015年にはインターハイ、国体、春高と三冠を達成し、翌16年も春高を連覇。当時メンバーである永露元稀、谷口渉、金子聖輝などVリーグにも多くのOBを輩出している。