第73回全国高校バスケットボール選手権(ウインターカップ)の男子決勝が12月29日、東京体育館で行われ、仙台大明成(宮城)が東山(京都)を72-70で破り、3年ぶり6度目の優勝を飾った。劇的な勝ち上がりを生んだのは、迷わず自分たちを信じる力だった。(青木美帆)

試合終了のブザーが鳴った瞬間、コートに立っていた仙台大明成の選手たちは、はじけるように自陣へ駆け、抱き合い、喜びの雄たけびをあげた。

残り5秒で決着、3点差以内で決着

後半の序盤でついた17点差を、山内ジャヘル琉人(3年)のシュートを中心にコツコツと詰め、同点で迎えた残り5秒、山﨑一渉(2年)のシュートで決着。

山﨑一渉(日本バスケットボール協会提供)

大会史上に残る名勝負を制した直後、1年時からこの大会を経験してきた越田大翔(3年)は、「コロナ禍で迎えた最後のウインターカップ、みんなで協力し合って優勝できたことがうれしいです」と声を詰まらせながら話した。

ガードとしてチームに流れを引き寄せた越田大翔(3年)(日本バスケットボール協会提供)

昨年優勝の福岡第一(福岡)、3位の北陸(北陸)と東山(京都)。仙台大明成が3回戦以降に戦った相手は、いずれも前評判では格上のチーム。しかし同校はこれらのチームに対して後半で逆転し、3点差以内で決着。粘りが光った。

心がけた「毎日、迷わない」を徹底すること

なぜこのような粘り強い戦いができたのか。その理由の一端は、同校が今大会に掲げたテーマにあるかもしれない。大一番となった福岡第一戦後、越田はこう話した。
「大会に入る10日くらい前から、毎日迷わず、すっきりとプレーすることを意識してやってきました。それでみんなの調子が上がっていって、福岡第一に負けないような走り合いができました」

この「迷わず、すっきりとプレーする」という意識は、決勝戦でもいかんなく発揮された。

準決勝で思うようなプレーができなかった一戸啓吾(3年)は17得点と躍動。「開き直って、いいプレーをイメージしながら試合に入りました」と振り返る。

前半、3ポイントシュートがまったく入らなかった山内も「外したシュートは気にせず、ディフェンスで取り返そうとしました」とコメント。3本のスティールを成功させた第3クォーターについては『苦しいときは俺が助けてやる』という気持ちでディフェンスしていました」と話し、逆転の契機を生み出した。

山内ジャヘル琉人(日本バスケットボール協会提供)

主力がけがで離脱…イレギュラーな事態が起きても揺るがない

山内と並んで後半の流れを作った越田は、残り1分、1点リードという場面で5ファール退場。「『やってしまった』と思いましたが、そこまで不安はなかったです」と交代した浅原紳介(3年)に託し、勝負の行方を見守った。

浅原紳介(日本バスケットボール協会提供)

大会直前に主力2人がケガで戦線離脱するというショッキングな出来事があった。対戦相手の棄権で3回戦が試合当日に不戦勝になった。イレギュラーな事態に直面しながら、それでも最後までトーナメントを勝ち続けられたのは、自分たちがやってきたことを信じ、迷うことなく全力で戦うことができたからに他ならないだろう。

2000年創部。部員29人(3年生12人、2年生7人、1年生10人)。卒業生に八村塁(NBAワシントン・ウィザーズ)ら。後輩たちのがんばりに対し、八村はTwitterを通じて「僕らが3連覇したときよりも価値がある優勝」とコメントした。