新型コロナウイルスの感染が収まらない中、受験シーズンに入りました。受験生は、風邪・インフルエンザ対策も含めた感染予防に気をつかっていることでしょう。新型コロナをはじめとした感染症にかからない体にするために、必要な行動・心がけについて内科医の建部雄氏先生に教えてもらいました。
今シーズンの受験生の皆さんは、例年以上に健康維持と風邪症状について敏感になっていると思います。大切な時期に風邪症状になりたくない、ましてや新型コロナウイルス感染症などは、全力で回避したいところでしょう。
今回は、新型コロナウイルス感染症について新たに判明していることを踏まえて、「健全な状態で受験シーズンを乗り切るため」の必要な行動や心がけについてお伝えしていきます。
感染経路は接触と飛沫
一般的な風邪症状、インフルエンザウイルス感染症、新型コロナウイルス感染症は「ウイルス感染」によるもの。それらを含むウイルスの多くは、気温と湿度が低く乾燥している冬の環境で生存率が高まり、拡散しやすく威力を発揮する性質を持ちます。
感染パターンは主に以下の2つです。
【1】接触感染
感染者からつり革・手すり・ドアノブ・照明器具のスイッチなど周囲の「モノ」にウイルスが付着します。
次に感染していない第3者がウイルスのついた「モノ」に触れてしまった後、ウイルスの付いた手で食事をしたり、口や鼻を触ったりして感染が成立するパターンです。
【2】飛沫感染
「飛沫」とは要するに「唾のしぶき」のことです。
新型コロナウイルス感染症については、その中でもかなり細かくなって遠くまで浮遊しやすくなった飛沫である「エアロゾル」や「マイクロエアロゾル」から感染する可能性が指摘されています。
バランスのとれた食生活・適度な運動や睡眠時間の確保
このことを踏まえ、受験生個人としてのこれらのウイルス感染症の予防対策は、次の通りです。
まずは「バランスのとれた食生活・適度な運動や睡眠時間の確保」。自分自身の免疫システムの健全化に必要なことです。
仮にウイルスをはじめとする病原性微生物が体内に侵入したとしても、免疫のシステムが健全ならば多くの場合、軽症のままで病原性微生物を退治することが可能です。
ビタミンDの欠乏に注意
バランスの取れた食事には、「免疫調整作用がある成分」が含まれていて、摂取することで人体内での免疫機能が調節されます。ヒトに有益な効果があることは、科学的根拠をもって明確になっています。
食生活で意外に盲点なのが、「ビタミン」や「ミネラル」の摂取の必要性です。医学的にはこれらの欠乏がヒトの免疫機能を障害することがすでに知られていてます。
最近になって分かってきたこととして、ビタミンDの欠乏がインフルエンザウイルスの発症に関与しているとの報告もあります。
ビタミンDは食品から摂取するほか、週2回以上・1回あたり15~30分の日光浴でヒトの体内で合成されますので、軽いジョギングや散歩という形での実践が現実的と思われます。
そのため、この受験時期に我流の無理なダイエットをすることはお勧めできません。
睡眠時間を確保、しっかり熟睡して
また、睡眠不足により免疫システムが崩れ、ウイルス感染率が上昇する事実も明らかにされています。
睡眠時間が7時間以上と5時間未満で比較すると、ウイルス感染率が2倍近く高くなるという報告もあります。日頃の睡眠の時間と、睡眠の質(要するに熟睡かどうか)が重要ともされています。
外出時などのマスク装用が大事
この時期の冷たく乾燥した外気をそのまま鼻や口で長時間吸いこむと、鼻腔や気道の粘膜での血液循環が低下し、免疫機能も低下してしまいます。
口・鼻をマスクで覆うことによって、その周囲を加温・加湿することができるので、血液循環や免疫機能の低下を防ぎます。マスク装用によって、マスクと顔の隙間から侵入したり、マスクを通り抜けて侵入したりする病原微生物に感染することを防ぎます。
こまめな手洗い&帰宅直後の洗顔
「こまめな手洗い」と「帰宅直後の洗顔」も大切です。
いかに気を付けていても、病原性微生物が付着している可能性のある自分自身の頭髪や顔面をつい触ってしまい、その手指で口周囲・鼻周囲をまた触ってしまうことによる病原性微生物の体内侵入を防ぎます。
こまめな手洗いに際しては、その後に保湿剤・ハンドケア剤を利用すると手荒れ防止に良いでしょう。手洗いにより失った皮脂や保湿成分を補い、皮膚表面から失われる水分を皮膚に留める作用があります。
手洗い後はすぐに保湿剤・ハンドケア剤を塗っておく。ここまでをセットで習慣づけていくことを心掛けましょう。
ちなみに、もし可能であれば、帰宅直後にいっそのこと付着したウイルスを洗い流す目的で入浴してしまっても良いでしょう。
医療法人社団聖仁会横浜甦生病院勤務。総合内科・一般内科が専門。京都市生まれ。2001年、昭和大学医学部卒業。大規模総合病院の救急科で経験を積み、急性期病院・クリニックの勤務を経て現職。