サッカー選手権出場29 回を誇る北海道大谷室蘭(北海道)に、強豪復活へ静かな闘志を燃やす主将がいる。男子サッカー部の吉田光希主将(3年)=北海道・札幌宮の森中出身=は過去2年、チームが全国選手権に進出できなかった悔しさを胸に、前向きなプレーと信頼を集めるリーダーシップで、新たな歴史をつくろうとしている。 (文・写真 岡崎敏)
スピードと突破力が武器のFW吉田は、試合でもチームのエース。6月の全国高校総体(インターハイ)北海道予選では、4試合連続ゴールを挙げるなどの活躍で、チームを3年ぶりの全国舞台に導いた。
「僕らの代はここ2年間、全国大会に行けてなかったので、プレッシャーはありました」 北海道では、前校名の室蘭大谷の時代から常勝のイメージがある。部には「全国に行って当たり前」という重圧がかかる。
主将に指名されたのは、あと一歩で全国を逃した過去2年を最も知る選手だったからだ。及川真行監督(39)は「1年生からベンチに入っていて、去年やおととしの悔しさを知っている。練習で手を抜かないし、任せたらやってくれるという信頼もあった」と話す。 ただ、部員99人の大所帯を引っ張る苦労も多い。「人数が多いですし、一人一人が高い意識でまとまればすごい力になると思うけど、なかなか全員には目が行かない。なるべくチーム全体を見られるように、ピッチ外でも心掛けています」(吉田)
ベンチを外れた選手への配慮を忘れず、常に声を掛け、用具の準備や片付け、グラウンド整備なども進んで行う。「率先してやることで、みんなが付いてくると思う」
遠征先でも、消灯時間に部屋を回り、電気やテレビを消して部員の体調維持を気遣う。宿舎やサッカー関係者などへのあいさつも欠かさない。「遠征先ではお世話になる方も多いですし、しっかり自分の言葉で感謝を伝えるようにしています」
学校では進学コースに在籍する。「宿題は休み時間などを使い、その日のうちに終わらせます」。時間を効率的に使い、部活と勉強を両立する。
非の打ちどころのない主将のように見える半面、飾らない素顔も魅力的だ。中路竜二(3年)=同・伊達中出身=が「普段はとても明るくて、一発芸が得意。物まねも意外と好き」と証言するように、大好きな日本代表・本田圭佑の物まねで笑わせることも。
挫折も数多く味わった。昨年のインターハイ予選は、準決勝で控えに回り出場できなかった。昨年12月のU18プレミアリーグ参入決定戦、今夏のインターハイ1回戦はいずれもPK負けを喫した。
入学時から夢の舞台だった全国選手権出場を懸けた戦いが間もなく始まる。「悔しい思いをしている仲間がたくさんいるのが、今年のチームの強み。先輩たちが残してくれた歴史を変えられるように頑張りたい」 苦しんだ経験を糧にして1戦必勝。全国の頂点を目指し、残りの高校生活を完全燃焼する。