衆参両院本会議は9月16日、安倍晋三首相辞任を受けた後継の第99代首相に菅義偉(すが・よしひで)氏(71)を選出、皇居での首相任命式と閣僚認証式を経て自民、公明両党連立による菅内閣が発足した。

幹事長には加藤勝信厚生労働相(64)を起用、河野太郎防衛相(57)を行政改革・規制改革担当相に充てた。第2次安倍内閣からは麻生太郎副総理兼財務相(79)、茂木敏充外相(64)、小泉進次郎環境相(39)ら8人が再任された。

菅義偉首相(首相官邸のホームページから)

新首相ってどんな人?

菅氏は1948年、豪雪地帯で知られる現在の秋田県湯沢市で農家の長男として生まれた。高校卒業後に上京、段ボール工場で働き、法政大学で学んだ。民間企業に就職したが、政治の世界を志し、横浜市を地盤とする自民党衆院議員の故小此木彦三郎氏の秘書、横浜市議を経て96年の衆院選で当選し国政に転じた。

第2次安倍内閣では一貫して官房長官として危機管理を担った。自民党から選ばれた首相で、派閥に所属せず世襲でもないのは異例という。

安倍路線継承、政権の課題は?

菅首相は安倍路線の継承を前面に打ち出し、新型コロナウイルス対策を最優先課題に挙げて「来年前半までに全ての国民に行き渡るようワクチン確保を目指す」とした。経済政策では「アベノミクス継承」を強調、「行政の縦割り、既得権益、あしき前例主義を打ち破る」と述べ、「国民のために働く内閣」を目指す考えを示した。

ただ、新型コロナで打撃を受けた日本経済の建て直しは容易ではない。来夏に延期された東京五輪・パラリンピックは感染収束のメドは立たず、水際対策や医療体制整備、費用負担など課題は多い。米中対立の下で外交のかじ取りを誤れば板挟みになるリスクもある。急速な高齢化が進む中、社会保障制度改革の行方は。森友、加計学園や桜を見る会を巡る問題など〝負の遺産〟も残る。

政局の大きな焦点は衆院解散だ。衆院議員任期は来年10月21日の、首相の解散判断を巡る神経戦は既に始まっており、年内、年明けの解散、任期満了での総選挙などが取りざたされている。

在任期間7年8カ月、歴代最長だった安倍政権

安倍首相は8月28日、体調悪化で職務継続が困難として辞意を表明、12年12月の第2次内閣発足から約7年8カ月で幕を閉じた。「アベノミクス」を推進、自然災害などの危機管理を看板に安定政権を築いた。

しかし、在任中に「政治とカネ」問題や失言など不祥事で閣僚10人が辞任、新型コロナ対応では不手際が目立ち、内閣支持率は低迷した。強い意欲を示した憲法改正や北朝鮮拉致問題の解決には道筋を付けられなかった。

在職日数は2822日、第1次からの通算は3188日でいずれも歴代最長だった。

(共同通信編集委員・遠藤一弥)