「『グローバル人材』になるために、留学や国際交流が大切」と言われるが、いざ外国人を目の前にしたら戸惑ってしまいそうな高校生が大半だろう。国際交流に必要な力とは? この夏、「AIU高校生国際交流プログラム」でアメリカに渡り、現地の高校生と交流した2人に、体験を基に書いてもらった。
学校での学び 役立った
山本恭輔(千葉・県立千葉高校2年)
アメリカの高校生との交流プログラムに参加するに当たり、僕は「英語の語ご彙い力、コミュニケーション力、アメリカについての知識などが足りず、うまくいかなかったら」と考えたものでした。
でも、実際に参加してみて一番役に立ったのは、今まで小中高と学んできた、いわゆる教科書レベルの知識と、それを論理的に説明する力でした。
例えば、アメリカの生徒に「日本の気候はどうなっているのか」と質問されたとき、太平洋側は夏に、日本海側は冬に、それぞれ降水が多いといった「事実」だけを伝えても彼らは納得しません。本州の中央に大きな山脈があることや、大陸からの偏西風の影響を受けることなど、「メカニズム」まで論理的に説明する必要がありました。
もちろん、スムーズに説明するには語彙力も必要ですが、電子辞書などである程度カバーできます。もし、気候の原理を知らなければ、たとえどれだけ英語を話せても納得してもらえないでしょう。
会話についていくのに役立った一言
会話については、以前、日本で参加したイベントで非常に悔しい経験をしたことがあります。ネーティブのスピードでは言葉が聞き取れず、なかなか会話に割って入って自分の思っていることを言えなかったのです。
今回は、会話についていけなくなりそうな時は、勇気を出して”Speak slowly please.”や”What are you talking about?” と言うことで、「会話に全然入れない」ということはなくなりました。自分が思うこと、してほしいことを思い切って口にすることが大切と実感しました。
会話に入るためには、国際情勢、宗教、性差別、核問題、貧困などについて、自分なりの意見も求められます。高校生である私たちが今すべきことは、まずは学校で学ぶ教科書レベルの知識を大切にすること、そして自分なりの意見を持つことなのです。
加えてコミュニケーションを助けてくれたのは、スポーツや芸術、料理などの経験です。
ホームステイ先で肉じゃがや白玉団子を作ったらとても喜ばれました。素人ばかりで披露した書道パフォーマンスも、スタンディングオベーションでした。カラオケでは、みんなで「Let It Go」を熱唱しました。応援合戦のために横断幕を作った時も、学校で美術部に所属する僕はデザイン力を発揮できました。これらもまた、学校で身に付けたものです。学校での学びの大切さを知った3週間でした。
メモ AIU高校生国際交流プログラム
応募者から選ばれた日本人高校生40人が渡米。①「高校生外交官」として国連本部や国務省、国防総省などを訪問するツアー②ホームステイ③現地の高校生40人との共同生活・交流―など3週間のプログラム。参加生徒は事前にネットを使って打ち合わせ、現地での発表内容などを準備する。今年で28回目。
日本文化の奥深さ伝える
石田優花(愛知・名古屋大学教育学部附属高校2年)
交流プログラムでの私の目標は、日本文化をアメリカの高校生に伝えることでした。中学生のころ、京都の舞妓さんになるのが夢で茶道や着付けを習い始めて以来、一つ一つの作法に意味がある日本文化の奥深さをもっと多くの人に伝えたいと強く思っていたからです。
アメリカでは、書道、武道、伝統芸能といった日本文化を現地の高校生に体験してもらう祭り「Japanese Festival」を日本側40人で分担して企画しました。私は茶道を担当し、渡米2か月前から準備を進め、当日はアメリカの高校生にも浴衣を着て、お茶をたててもらいました。
作法だけでなく、作法の背景にある意味まで伝えました。例えば、抹茶を飲む前に茶わんを90度時計回りに回す作法があります。これは抹茶を飲む位置を茶わんの正面から外すために行います。茶わんの正面を外すことで、茶事の主催者に謙遜の気持ちを表すのです。こうした意味を伝えて初めて、日本ならではの心遣いのある伝統文化を伝えたことになります。
初めは作法の多さに驚いていたアメリカの高校生も、やがて作法の意味を理解し、細かなことにまで心配りができる日本文化の精神に感心していました。
アメリカの高校生は、日本に非常に興味を持ってくれました。伝統文化や、日本で人気の歌手やファッション、政治など、あらゆることを質問してきます。「日本と中国の尖閣諸島の問題についてどう思うか」と聞かれ、英語で議論したこともありました。そして、彼らは自国の文化や政治、経済などあらゆることに興味を持ち、豊富な知識を持っています。私たちはどうでしょうか。
自国文化の魅力に誇りを
アメリカで、自分で浴衣を着ることができた日本人は半数以下でした。私はまず日本人、とりわけ将来を担う10代に、日本についてもっと知ってほしいと思います。グローバル化と、日本の伝統文化やしきたりは、共存させるべきものです。魅力あふれる日本文化を知り、誇りを持ち、海外の人に伝えてほしい。私は同世代の皆さんに、そう願っています。