坂美悠さん(京都聖母学院高校3年)は、文化部の全国大会である第44回全国高校総合文化祭(総文祭、10月末までオンライン開催中)写真部門で文部科学大臣賞を受賞した。高校生ならではの感性で生み出された「エモい」写真の数々はどのように撮影したのか、じっくり聞いた。(文・写真 木和田志乃)

音を光で表現した

―今年の総文祭で日本一になった受賞作品「私の音色」について教えてください。何をいつ撮った写真ですか?

この作品は、これまでの高校生活を通じて最も印象深い作品になりました。

坂さんの写真「私の音色」

撮影したのは昨年の年末。ちょうど光を使った撮影にはまっていた時期で、「目に見えない音というものを光で表したい」と思って撮った作品です。

まずは自宅でカメラを三脚に固定。セルフタイマーをセットしてファイバー状のライトをモデルの頭の前で振り、シャッタースピードを遅くして何十枚も撮りました。

ライトの色は変化するので赤や黄色でも撮影したのですが、私の中にあるイメージにしっくりくるのが紫でした。実は前々日にペンライトを使って撮影したのですが、気持ちが悪い作品になってしまったので……撮り直しました。

小学校からの友人がモデル

―モデルの方はどなたですか?

小学校からの友人です。高1の時から撮影のモデルをお願いしています。

今回の撮影は2日がかりで、少し上を向いてヘッドホンで音楽を聴く姿勢を何時間も取り続けて大変だったと思います。受賞が決まった時は「すごいね、がんばったね」と泣いて喜んでくれました。

一眼レフを手にする坂さん

きっかけはおじいちゃん

―写真に関心を持ったのはいつ?

私の祖父が写真を趣味にしていて、その撮影についていくうちに写真に関心を持ったんです。小6の時にお年玉でコンパクトカメラを買って、身のまわりのものなどを撮るようになりました。

中3の時に一眼レフのカメラを買い、高校で写真部に入ってから本格的に撮影するようになりました。

坂さん愛用の一眼レフ。CanonのEOS7D。愛らしいリボンがついたストラップを使っている

手術前日も写真撮影

―写真技術はどのようにして身に付けてきたのですか?

カメラの基本的な使い方は、写真部に入ってから顧問の和田雅裕先生に教えていただきました。写真集やカメラ雑誌、SNSなどで見て、気になった写真に似せられるように自分で設定を変えながら撮影を繰り返すことで身に付けていきました。

校内に咲く花を撮影中

―普段はいつ、どんなところで撮影していますか?

家の中で文房具などの身のまわりのものや人を撮ったりもしますし、京都に住んでいるので週末はお寺で撮ることが多いです。

金閣寺に行ったからといって、金閣寺そのものを撮ることはありません。実は風景写真はどうしたら人と違う作品を撮れるのか、まだわからなくて苦手で……。今は建物よりも道中で目についたものを、組み合わせやどう切り取るか、構図を考えながら撮っています。

桜や紅葉といった季節の移り変わりもよく撮影します。今年の春先に、体育の授業で足を骨折して手術を受けることになり……。ですが、入院する前日も足をギプスで固定した状態でも、満開の桜を撮りに行きました!

「私の写真はありきたり」スランプになり

―写真を撮影するにあたって苦労したことは?

実は去年の夏前、ありきたりな写真ばかり撮っているように思えてしまって。自分の写真が好きになれなくなり、まったく写真を撮れなくなりました。

真剣な表情でファインダーをのぞく

カメラを持たない日々が1カ月ほどたちました。私の様子を心配した母に外に連れ出されて撮影に行ったんです。その時に「私はやっぱり写真が好きなんだな」と気づきました。

それからは視点を意識して、上から撮ったり下から撮ったり、角度を変えたり、マクロレンズで寄ったりしながら何枚も撮っています。まねすることから抜け出して自分らしさが出てきて、「いいな」と思える写真が増えました。

外の撮影は高いヒールを履いて

―撮影する時にどんな工夫をしていますか?

小物を使っています。例えばりんごや桃みたいな果物って、網状のものに包まれていますよね。

発泡スチロールの緩衝材も利用(写真はイメージ)

この発泡スチロールの緩衝材をレンズに付けたり、ラップを使って背景の光を散らして撮ったりもしました。雑貨を買い物に行くときも、いつも「これは撮影に使えるかな」と考えているんですよ。

私は背が低いので、外で撮影する時はヒールの高い靴を履いています! 少しでも上の位置から撮影できるようにするためです。

―写真を始めてどんな力が付きましたか?

私はもともとおとなしい性格。ですが、撮影の許可をもらったり、撮影現場で他のカメラマンと交流したりする中で、コミュニケーションする力がついたと思います。それから、自分らしいものを撮ろうと模索することで自分を出せるようになりましたし、創造力がついたと思います。

スマホじゃ撮れない写真がある

―写真撮影の魅力はなんですか?

撮影時に流れている日常を切り取ってあとから見返せるところ、瞬間を形として残せるところが写真の醍醐味(だいごみ)です。

スマホでも写真は撮れますが、シャッタースピードや露出などを自由に設定できてレンズも交換できる一眼レフのカメラはより撮りたい写真が撮れますね。今後は人とは違う作品を残すのが目標です。

まずは他の人の写真をまねてみて

―写真がうまくなるためにするとよい練習方法は?

人の作品をたくさん見ることです。その中から自分が作りたいと思った作品をまずはまねしてみてください。

どうしたら同じような作品が撮れるのか試行錯誤して撮ってみるとよいと思います。それから構図が大事! どういう構図がきれいか、私はいつも撮る前に考えています。

カメラをチェック。良いアングルで撮れたみたい!

―作品タイトルをつけるコツは?

和田先生からは「写真とタイトルがセットになって一つの作品になる」と言われますが、タイトルを考えるのは難しいですね。先輩からの「写真の中の人や物の気持ちになって考える」とのアドバイスを思い出して考えることがあります。

―ご自身の世界観を投影した斬新で惹かれる作品ですよね。こうした「エモい」写真を撮るには?

自分が「いい」「おもしろい」と思ったものを撮ることが大前提です。それから撮ろうと思ったものとの距離やアングルを工夫してみてください。