7月下旬、インド洋の島国「モーリシャス」沖で日本企業が所有する貨物船「わかしお」が座礁した。重油が大量に海に流出したことで、自然環境や生態系、漁業・観光業などの産業への深刻な被害が懸念されている。寄付を募る動画を作成した高校生有志団体「ActionforMoris」のメンバーである小倉莉子さん(3年)に、この活動に懸ける思いを聞いた。(野村麻里子)
日本の高校生からモーリシャスのみなさんへ。日本中で寄付の輪をつなげましょう。#ActionforMoria #actionformoris #Mauritius #mauritiusoilspill #MauritiusOilSpill pic.twitter.com/yJMAO4L3RL
— Action for Moris🇲🇺 (@ActionforMoris) August 24, 2020
日本の高校生だからできること
―どんな活動をしていますか?
高校生有志団体「ActionforMoris」では、重油流失について、寄付を呼びかける動画を作成して発信しています。モーリシャスについての情報なども共に拡散し、美しい海を取り戻すために一人でも多くの人に貢献してもらえるようにと、主にSNS(Twitter(@ActionforMoris)、Instagram(@actionformoris)、Facebookを活用しています。
モーリシャスで絶滅の危機に瀕している国の動植物の保護と保全に専念するNGO「モーリシャス野生生物団体」のホームページに、寄付先のクラウドファンディングサイト「justgiving」、銀行振り込みの口座などが記載されています。
そのため、私たちは「justgiving」を使った寄付を呼びかけました。寄付のサイトが全て英語だったので、わかりやすいように、寄付の方法を日本語で説明する動画も作成し投稿しました。
募金方法はこちらに記載しております! https://t.co/vhlDKAERCY
— Action for Moris🇲🇺 (@ActionforMoris) August 25, 2020
結成から2日で動画を作成し公開
―この団体を立ち上げたきっかけを教えてください。
現地の方々が昼夜を問わず、懸命に重油の回収作業を続けている姿をニュースで見て胸を痛めていました。
そんな中、「今は実際に現地に出向くことはできないしできることは寄付しかない。けれど、僕たち(高校生)だからこそ何かするべきではないか」というLINEが届いたんです。送り主は、文珠玄基(もんじゅはるき)君(3年)。彼とは、社会問題を考えるZoomのイベントで知り合いました。
同じつながりで彼の熱い思いに賛同した高校生が集まり、16人で有志団体を結成しました。結成から、寄付を呼び掛ける動画の発表まで2日間で完成させました。
英語とフランス語にも翻訳
―短期間のうちに行動に移していますね。
「発信するならば、迅速に行動に移そう!」と皆で頻繁に連絡をとり合いました。全員で実際に集まることはできなかったもののLINEで意見を交わしすぐに実現につなげました。
皆で話し合い、「募金という形でしか支援はできませんが、遠い日本から、モーリシャスのことを深く考えていて心は寄り添っています」という思いを伝えようと、心を一つにしました。
「現地の人たちにも届きますように」という思いをこめて、それぞれのメッセージを各自で撮影しました。そのデータを、動画編集が得意なメンバーの2人が素早く動画を作成してくれました。
モーリシャスでは、英語とフランス語、モーリシャス・クレオール語が使用されています。英語、フランス語にたけているメンバーがいたので、日本語と共に英仏の訳をメッセージで入れました。
瞬く間に拡散「届いた実感がある」
―TwitterなどSNSで拡散されましたね。
動画だと活字だけでは伝わらない気持ちがきっと届くのではないかと信じていました。SNSに投稿し寄付を呼びかけると、瞬く間に拡散され、8月28日現在、twitterで1600リツイート、動画の再生数は11.2万回を突破しました。
すると、モーリシャスの現地の方からメッセージが届いたんです。
「あなたたちの行動、寛大さに心から感謝します。あなたたちの思いは、この事件に素晴らしい影響を与えるでしょう。本当にありがとう。モーリシャスから」という内容でした。
また、日本人の方からも「心から声援を送りたい」「すてきなアクション!」という声が届いたんです。
「誰でも発信者になれるんだ」「私たちの気持ちが、広く国境を超え届いたんだ」という実感がありました。
私たちに関係ないできごとなのか
―モーリシャスでの重油流出について、どんな思いを抱いていますか。
モーリシャスの名前は以前から知っていましたが、こんなにも美しい自然に恵まれた国だとは知りませんでした。私たちの住む日本から遠い海で起こった事件だから、私たちの生活には「関係ないできごと」として目を背けていいことなのでしょうか。
高校生の私たちの小さな声が、SNSの呼びかけを通じて「大きな声」となりました。寄付先の現地の方からお礼のメッセージが届いた時、勇気を振り絞って行動してみて本当に良かったと実感しました。現地の方は「日本人には責任はありませんよ!」ともおっしゃっていました。
島に住む現地の方々の生活、生態系を守るためにも、化石燃料に依存しすぎないようにすることも、私たち個人ができる取り組みだと思います。日々の選択で環境保護につながると知りました。
新型コロナウイルスが終息した際には、多くの方がモーリシャスに旅行に行くことも復興につながります。私も、美しい自然があるモーリシャスに、いつか訪れてみたいです!