インターハイ(全国高校総体)の24回を含め、全国大会優勝は実に67回。高校女子バスケットボールの名門・桜花学園(愛知)も、新型コロナウイルスの影響で苦しい日々を過ごしてきた。しかし、「落ち込んでいても前には進めない」と、江村優有(3年)主将が悔しい思いを胸に秘めながら、チームを力強くけん引している。(小野哲史、写真は学校提供)

休校期間は毎日オンライントレーニング

―緊急事態宣言発令から解除、現在に至るまで、部活動の活動状況はどう変わっていきましたか?

自粛期間中はチーム練習ができず、体育館でボールを使用した練習も中止になりました。寮などで密にならないように気をつけながら、個人でチューブトレーニングや腹筋、背筋、体幹などのトレーニングを中心に、基本的に自分でやることを考えながら自主練習をしていました。

部の精神的支柱として、仲間からの信頼感も厚い主将の江村優有

ゴールデンウイーク後から約2週間は、家族が車で迎えに来られる部員は実家に帰り、私を含めた7人は寮に残りました。その間はZoomというアプリを使い、ほとんど毎日、決められた時間に1時間くらい、全員でオンライントレーニングなどを行いました。

実家に帰っていた部員が戻ってから、チーム練習を再開しました。はじめはコンタクトをせずにボールを扱うハンドリングや、ランメニューなど基礎が中心の練習をしました。徐々にコンタクトをする練習も増えて、現在はチーム内で試合をするなど、自粛前の練習に戻っています。

インハイ中止…残念で悔しくて

―4月下旬に正式決定したインターハイの中止をどう知り、そのときの部員はどのような様子でしたか?

寮の食堂で全員で夕食をとった後、顧問の井上眞一先生からインターハイ中止が決まったという話を聞きました。そのときは部員の誰一人、何も言葉を発することができず、ただただ静まり返っていました。井上先生からは帰省できる者は一度、帰省をして、気持ちを切り替えてから練習を再開しようという話がありました。

それから各自が部屋に戻ると、残念な気持ちと悔しい気持ちでいっぱいで、多くの部員が泣いていました。私自身は泣きませんでしたが、特に3年生はほとんどの人が泣いていたように思います。

集中力が欠け、練習の質が落ちた

―部員が泣いていたり、練習がままならなくなったりした状況で、主将としてどのように部員たちを支え、まとめようとしましたか。

泣いている部員には、「インターハイがなくなったことは残念だけど、インターハイがすべてじゃない。次のウインターカップに向けて頑張ろう」という話をしました。

新チームが始まったときは、このチームで3冠を達成しようという目標を立てていたので、それができなくなって残念でしたが、落ち込んでいても前には進めないと思ったからです。ただ、そう伝えてもすぐに全員が全員、「よし、頑張ろう」とはなれませんでした。

密を避けながら練習

帰省明けから全体練習を徐々に再開しましたが、インターハイがなくなってしまったからか、みんなのモチベーションが下がっていると感じました。今まではみんなで盛り上げながらできていた練習が、集中力が欠けて、練習の質も落ち、なんとなく締まりがありませんでした。

そういう時間はもったいないと思ったので、いつも以上に率先して声を出すように意識しました。また、練習再開後すぐにミーティングを開いて、全員でもう一度目標を確認し、「ウインターカップに向けて頑張ろう」という話をしました。そこでネガティブな意見が出るようなことはありませんでした。

「練習時間無駄にできない」意識が高まった

―新型コロナウイルスの流行前と後で、部活動の練習はどのように変わりましたか?

感染対策としては、手洗い、うがい、消毒はこまめにやるということと、外出するときはマスクの着用を徹底しています。また、練習前と練習後には体育館の窓を開けて、しっかり換気をするようにしています。

消毒や手洗い、うがいは感染対策として徹底して行っている

練習に関しては、時間を無駄にしてはいけないという思いから、以前よりも一つ一つの練習のポイントを考え、お互いに指摘し合いながら、質の高い練習を意識して取り組むようになりました。

―新型コロナウイルスの流行を通じて、江村さんご自身が得た気づきはありましたか?

バスケットボールができていることへの感謝の気持ちをより持つようになりました。また、いつ何があるかわからないので、もっと時間を大切にして、日々スキルアップやレベルアップに努め、1日1日を無駄にしてはいけないということを再確認しました。

時間を大切にして練習に励む
1955年創部。部員27人(3年生9人、2年生8人、1年生10人)。全国高校選手権(ウインターカップ)優勝22回、インターハイ優勝24回、国体優勝21回。卒業生に渡嘉敷来夢(ENEOSサンフラワーズ)ら。練習日は週6回、火~金曜16:15~19:30/土日10:00~12:00、15:00~18:30。