全国大会で数々の好成績を収めてきた東京・東海大学付属高輪台高校吹奏楽部。新型コロナウイルスの影響で活動が制限される中でも、オンライン上でテレワーク合奏を試み、前へと進んだ。休部や大会中止の悲しみ乗り越えた同部部長の小倉由佳さん(3年)に話を聞いた。(中田宗孝、写真は学校提供)
こまめに換気、水分補給でコロナ対策
―みなさんの吹奏楽部が取り組んでいる新型コロナウイルス対策を教えてください。
私たちの部は全部員がそろうと170人近くになり、音楽室が「密」の状態になってしまうので、音楽室で全体合奏をする時の人数を大幅に減らしました。現在は最小限の人数で、部員同士の距離もしっかり離して合奏をしています。
合奏中は15~30分ごとに演奏を止めて、空気を入れかえる換気の時間を設けています。その際、部員は水分補給をして、自分たちの体調管理にも気を付けています。
各教室で行う楽器別のパート練習では、教室内の机と椅子を中央に集めて、部員がその周りを囲むようなカタチでお互いの距離をとってパート練に励んでいます。
共有物は手袋着用でさわる、返事は「うなずき」で
―これまでの練習スタイルと大きく変わりましたね。
やはりコロナの感染を予防することが何よりも大事なので、練習中のいろいろな場面でコロナ対策を徹底するようになりました。
楽器を演奏していない時は常にマスクを着用するのはもちろん、(キーボードやメトロノームといった)他の部員と共有する物は、綿の手袋を付けてふれるようにしています。演奏中に座る椅子も、各部員専用の椅子を用意しました。以前までは、ランダムに使っていたのですが、感染予防の観点からそのように変えました。
また、顧問の先生のお話に対しての反応の仕方も、以前のように「はい」と声に出して返事をするのではなく、うなずくだけになりました。
休校期間にテレワーク合奏
―休校期間中は自宅での自主練習のほかに、オンラインでの活動にも挑戦していましたね。
はい。オンライン活動として「テレワーク合奏」動画の公開や、新入生に向けた「部活紹介ビデオ制作」などに取り組みました。
私たちは演奏を通じて自分たちの笑顔を届けたい、たくさんの人に笑顔になってほしいと思いながら活動しています。そんな私たちが今この状況で、吹奏楽部として何ができるだろうかと、顧問の先生方やパート楽器ごとにオンラインで話し合いを行ったんです。その中のアイデアの一つに挙がったテレワーク合奏をやってみようとなりました。
3人組ガールズバンドSHISHAMOの楽曲「明日も」をテレワーク合奏した東海大学付属高輪台高校吹奏楽部
―みなさんの「テレワーク合奏」を聞いた方からの声は届いていますか。
「すごい良かった!」「笑顔になれました!」といったうれしい言葉をいただきました。テレワーク合奏は、実際には自宅での一人演奏だったので、いつもの合奏とは違う感じだったのですが「どんな演奏になるんだろうな」と、ワクワクしながら完成を待っていました。
吹奏楽コンの中止、我慢できずに涙
―昨年、みなさんの部が3年連続10回目の金賞を受賞した「全日本吹奏楽コンクール」はじめ、吹奏楽の主要大会の中止が次々発表されました。この状況を部員たちはどのように受け止めましたか。
毎年、全国大会に出場して金賞を目指すというのを一つの目標として活動してきたので、大会の中止は、私たちにとってとても大きな出来事でした。
大会の中止が発表された日の全体ミーティングの後、顧問の先生方と3年生部員とで話す場を設けていただいた時は、悲しい気持ちをみんなの前では出さずに我慢している部員もいれば、我慢できずに涙する部員もいました。
ですが、大会で金賞を取るだけが私たちの目標ではないですし、今までの努力は決して無駄にはならない。3年生部員同士でも「引退まで最高の一年にしようね」と励まし合いながら悲しみを乗り越え、今は前向きに頑張っていこうという気持ちでいます。
みんなとの合奏の機会を大切にしたい
―休部や大会中止を経験して得たものがあったのですね。
そうですね。部のみんなと顔を合わせて練習する当たり前の毎日は、すごく大切な時間だったんだなと感じています。そして、テレワーク合奏を経験したことで、私たちの演奏や笑顔を多くの方々に届けたいという思いがより強くなりました。
今後、主催の演奏会も予定されているので、部のみんなと一緒に演奏できる一つ一つの機会を大切にし、私たちのサウンドを届けたいです。
―部員をまとめる部長としての目標はありますか。
(悲しい出来事が多かったので)とにかく部のみんなには楽しく活動してほしいんです。部全体の雰囲気が明るくないと楽しさを感じられないので、部長の私が率先して笑顔で元気に過ごして部を盛り上げていきます!
部長の小倉由佳さん(3年・フルート)
- 1972年創部。部員168人(3年生50人、2年生45人、1年生73人)。2019年度は「全日本マーチングコンテスト東京都大会」金賞、「全日本吹奏楽コンクール」金賞、「全日本高等学校吹奏楽大会in横浜」連盟会長賞をそれぞれ受賞した。