300年前の「宝永噴火」を基にデータ作成

富士山が噴火すれば、東京都新宿区で灰が10センチ程度、横浜市で2センチ程度積もり、7都県(茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、静岡)で地上を走る鉄道が停止する―。政府の中央防災会議がこのほど、富士山の大規模噴火に伴う被害予測を初めて公表した。

約300年前の江戸時代に起きた「宝永噴火」を基にデータ作成したもので、噴火3時間後から15日目までの被害の広がりを時系列で地図上に示した。被害が発生すると想定される市区町村名は公表していない。

富士山が噴火すると、降灰により道路、鉄道、電力、水道など幅広い被害が出ると予測されている(政府の中央防災会議の資料より)

自動車も通行できず、飛行機は離発着できず

想定によると、鉄道は微量の灰でも走れなくなるため、噴火3時間後には東京都や神奈川県で電車が止まり、15日目には7都県の広範囲で運行不能に陥る。道路にも灰が積もると四輪駆動車以外では通行が困難になるため、首都圏の動脈が寸断されることになる。羽田空港や成田空港で飛行機の離着陸ができなくなり、停電や断水が起きる恐れもある。海外では2010年4月、アイスランドの火山から噴出した灰が拡散、約1週間で欧州発着の約10万便が欠航した。

さらに、水分を含むと重くなってこびりつきやすくなるため、積もった灰の重みで木造家屋が倒壊する危険もある。

健康被害の恐れも、影響長期化の恐れ

気象庁によると、火山灰は噴火で放出される物質のうち直径2ミリ未満のもの。粒子はガラスの破片のように鋭く、硬い。細かい粒子が気道を刺激して収縮させるためせきや鼻・喉の炎症、結膜炎などの健康被害をもたらす恐れがある。雪と違って解けて無くなることもないため、影響は長期間にわたる可能性もあるという。

処分が必要となる火山灰の量は4億9千万立方メートル、東日本大震災で出たがれきなど災害廃棄物の約10倍に当たると推定される。

少なくとも10回噴火、300年噴火せず

古文書などの歴史資料では、富士山は781年以降に少なくとも10回の噴火が起きたことが確認されている。「貞観噴火」(864年)では溶岩流の規模が最大で、流れ出た溶岩の上に青木ケ原樹海が形成された。また「宝永噴火」(1707年)は噴出した灰や石などの火砕物が最大で、江戸付近にも灰が降り積もったとされる。宝永噴火以降、約300年間噴火は確認されていない。