世界で118計画が進行

新型コロナウイルスの流行終息の切り札として注目されるワクチンの開発が世界中で進められている。世界保健機関(WHO)が5月半ばに公表したリストによると、118の開発計画が進行中で、うち8剤は人に投与して安全性や有効性を確かめる臨床試験の段階に入った。

ウイルスなどの病原体が体内に入ると免疫が働く。免疫細胞は的を記憶し、次にウイルスが入ってきても抗体をすぐに作り、感染や重症化を防ぐ。この仕組みを利用するのがワクチンで、多くの人がワクチンで免疫を獲得すれば流行は終息する。

一般的なワクチン開発の方法は、まずウイルスの感染や増殖をどう防ぐかを検討、候補となる化合物を選ぶ。次に、動物実験で問題が生じないか検証、その後に臨床試験を行い、国の承認を受けて販売される。

米国・中国・欧州・日本でも

米国ではウイルスの遺伝子情報を利用する核酸ワクチンなど、中国では病原性をなくしたウイルスを利用した不活化ワクチンなどの開発が進む。欧州ではドイツのバイオテクノロジー企業や英オックスフォード大などで研究が進められている。

WHOのリストには日本の国立感染症研究所や東京大医科学研究所、大阪大などの6剤も掲載。既に動物実験の段階に入ったものもあるが、いずれも臨床試験は始まっていない。

国内で進む新型コロナウイルスに対するワクチン開発(厚生労働省のウェブサイトから)

国内の普及は早くて来年

ワクチン接種は大勢の人を対象にしているため、十分な供給量を確保するのに時間がかかる。開発に携わる専門家は、国内の普及は早くても来年以降になるという見通しを示している。

また、免疫を獲得する可能性や副作用についての懸念もある。同じコロナウイルスの重症急性呼吸器症候群(SARS)を対象にしたマウスの動物実験ではワクチン投与後に肺炎の症状が重症化した報告例もある。また、一度かかると生涯同じ病気に感染しない「終生免疫」ができるのか疑問視する指摘もある。インフルエンザのように毎年ワクチンが必要になる可能性もあるという。

(共同通信編集委員・遠藤一弥)