開発したフィンを持つ早川優希君

早川優希君(京都・塔南高校1年)は、小学6年から続けるうちわ研究を生かして、楽に推進力を生み出すフィン(足ひれ)を開発。昨年12月、第60回日本学生科学賞(読売新聞社主催)で最高賞にあたる内閣総理大臣賞を獲得した。中学3年時にもうちわ研究で受賞しており、2年連続の快挙だ。
(文・写真 白井邦彦)

「下敷きは涼しくない」

「うちわと違い、下敷きで扇いでもあまり涼しくない。なぜだろう」

小学6年の時に抱いた素朴な疑問から「うちわ研究」を始めた。効率よく風を送るうちわを設計するために、鳥の翼やチョウの羽などの構造を追求した。たどり着いたのが、気流や水流といった流体(連続体)のメカニズム。うちわのしなりを工夫して、高原で吹くような快適な風を起こす研究が評価され、2015年に日本学生科学賞内閣総理大臣賞を受賞した。

16年5月には、科学研究の国際コンテスト「インテル国際学生科学技術フェア」(米国)に、日本の高校1年生として異例の出場を果たした。「賞を取れず悔しかったけれど、世界には人類に役立つ研究をする人が多く、刺激を受けた」

うちわ研究を応用

研究を応用して、人の役に立てないか。考えた結果、「昔、素潜りで使ったことのあるフィンと、うちわが起こす流体の特性は似ているかも」と思い当たった。

楽に動かせ、効率よく推進力を生み出すフィンがあれば、海の救命活動などに役立つかもしれない。うちわと同じくフィンのしなりが流体となって推進力を生むと理解し、少ない力でフィンを動かせるように中央に水を逃す開閉弁を設けた。「空気を逃す、うちわの手元にある骨組みから開閉弁のヒントを得た。約2カ月と短期間でフィンを開発できたのは、うちわ研究のおかげ」という。

将来は研究者か教員

この「省エネフィン」の研究で、日本学生科学賞の内閣総理大臣賞を2年連続で受賞。快挙を果たした。「うれしくて涙をこらえるのが大変でした」と振り返った。

将来の目標は研究者か教員。「先生なら、自分が小・中学校の先生にしてもらったように、子どもの個性を伸ばしたい」。教育者を育む同校教育みらい科で2つの夢を追う。