高校生の皆さんは自分の夢が何か思い浮かぶものはありますか? 高校生記者の鈴木とこー君は、夢を持てない自分自身のことをコンプレックスに感じていたそうです。

夢はたくさんあったけど……

夢を持てない。それが僕のコンプレックス。 

幼稚園の頃は、警察官になりたかった。「新幹線になりたい」とも言っていた。小学生になると、ロボットを作る人になりたいと思ったり、小説家になりたかったり、色々な夢を持った。中学生になると今度は途端に現実を思い知って、教師になりたいと考えた。

幼稚園の頃は新幹線になりたいと無邪気に言っていた

そんな風に夢はたくさん持ったのだけれど、それを夢として持ち続けることができなかった。警察官を目指す正義感はないし、新幹線になるには無機質にならなきゃいけない。ロボットを作るといっても、プログラミングが面倒そうだし、小説家は目指してみたけど才能ないな、と思ってやめてしまった。

教師は夢と言えるほどなりたいわけではなく、ただ目標がほしかったから、でっちあげたかりそめのゴールなんだと気づいた。 

僕はモブだから

夢を取っかえ引っ変えし続けて、やがて何を目指しているのか分からなくなってしまった。鏡に映る自分の瞳が輝かなくなって何年経つのか、もう僕には分からない。どこを見ているのか分からない僕の両眼は、毎日ため息をついている疲弊しきった大人のそれに似ている。

だからこのまま夢を持てない僕は、大人になったら毎日退屈そうに仕事をして、心と時間を消しゴムみたいに雑にすり減らすんだろうな、と思った。それもしょうがないかな、とも思った。

世の中、皆が皆、夢を持てるわけじゃない。将来の展望を全く持たない人だって同世代にはたぶんたくさんいる。夢を持つのは主人公の役割。僕はモブだから夢は持たず、世界を保つ歯車でいい。そう思った。

なりたくない自分になっている

昨年の夏、そんな考えに限界が来た。

夢を持たず、ただ言われた通りに勉強をしていた一学期の自分を見つめ直して、夏休み中の僕はどうしようもなく死にたくなった。小さい頃から漠然と思っていた「なりたくない自分」になってしまっていることに気づいた。すると、夢を持てないことがとても恥ずかしくて辛くなった。

自分が持っていた「なりたくない自分」像そのままになっていることが許せなかった。他の人がどうしているかに関係なく、夢を持ちたいと思った。

でもそう簡単には行かない。何せ僕は本当に特技がなかった。勉強も人より少しできるくらいで、誇れるほどではない。運動はこれまでしてこなかったし、これからもする気にはなれないくらいには運動音痴だ。歌もド下手。絵だって、これまでどんなに真面目にやっても美術の成績で人並みのものを取れたことがない。

いっつも「下手」で、「ダメ」で、真面目にやってても不真面目に見えるくらいだった。小説家を目指していたから物語は書けるけど、それも驚くほど才能がなかった。

嫌になった。このまま「夢を持たないかっこ悪い自分」で生きるくらいなら、終わりにした方が楽な気がした。 

夢を持つことをあきらめたくない

そんなとき。 僕が尊敬しているライトノベルの作家さんが、SNSで楽しそうに自分の作品のことを話しているのを見た。 

その様子を見て、思った。なんでもいいからライトノベルに関わっていたい。小説じゃない。漫画でもない。ライトノベルに関わっていたい。心からそう思った。

そのためにはどうすればいいだろう。考えたらすぐさま答えが出てきた。 編集者になろう。そう思った。編集者になって、才能あふれる作家さんたちをお手伝いしようと思った。

そうして、人生に夢を見るのを諦めていた僕は変わった。 

編集者になりたいという夢を見つけた

きっかけは昔の自分だった。無邪気に「新幹線になりたい」と言っていた自分が、夢を持ててない自分を「かっこ悪い」と言ってくれた。

夢を見なくてもいい時代だと思う。夢を見られないことが悪いことだとは今でも思わない。でも僕は自分が夢を持つことを諦めているのが「かっこ悪い」から夢を見続けていきたいと思った。

まだ誰にも誇れることは見つからない小僧は、もっと人生を夢物語にする夢を見つけた。(鈴木とこー・2年)