キリスト教カトリックの総本山バチカン市国(ローマ教皇庁)元首で、世界に13億人超の信者を抱えるキリスト教最大教派ローマ・カトリック教会の頂点に立つ教皇フランシスコ(82)が昨年11月23日から26日まで日本を訪問した。

ローマ教皇としては故ヨハネ・パウロ2世以来38年ぶり史上2度目の訪日だった。

「平和の巡礼者」を自称する教皇は被爆地の長崎、広島を訪問。「核兵器のない世界は可能だ。必要不可欠という信念を持って政治をつかさどる指導者に求める」(長崎の演説)、「戦争における原子力使用は犯罪以外の何ものでもない。真の平和とは非武装の平和以外にあり得ない」(広島の演説)と、核廃絶と非武装に向けた強いメッセージを発信した。

東京では東日本大震災被災者との集いを開き、東京電力福島第1原発事故を地震、津波と「三つの大規模災害」と呼び、多くの人々の悲しみと痛みに祈りを捧げた。教皇は東京からローマに戻る機中で行われた記者会見で、原発はひとたび事故となれば重大な被害を引き起こすとして「完全に安全が保障されるまでは利用すべきでない」と警告した。

また、東京ドームで約5万人の信者を前にミサを行い「日本は経済的に高度に発展した社会だが、若い人は自分の存在価値を見いだせず、社会からはみ出していると感じ、過剰な競争意識によって傷ついている」と指摘。「主の言葉」として「くよくよせず、信頼しなさい。明日のことまでくよくよ悩まないでください」という言葉を贈った。

2019年11月に日本を訪れたローマ教皇フランシスコ(Tomohiro Ohsumi/GettyImages)

【MEMO】 ローマ教皇 キリスト12使徒の筆頭で初代教皇とされるペテロの後継者で地上でのキリストの代理人とされる。フランシスコ教皇は1936年ブエノスアイレスでイタリア系移民の家庭で生まれ、2013年3月に第266代教皇に選ばれた。