3月21日にあった第86回選抜高校野球大会の1回戦で、履正社(大阪)の溝田悠人(2年)=兵庫・広嶺中出身=が10年ぶりの快挙にあと一歩まで迫った。小山台(東京)を相手に9回1死までノーヒットノーランに抑える快投で、一躍ヒーローになった。 (高野想)
都立校として初出場した小山台との対戦。3万6千人の観客が詰めかけた甲子園球場は、回を追うごとに緊迫していった。
履正社の先発・溝田が安打を許さない。走者は1回に味方の失策で許しただけ。9回1死まで取った。ノーヒットノーランの快挙目前。小山台の代打・竹下直輝(3年)=同・山手中出身=の打球は溝田の後方に転がり、三塁手の辻心薫(3年)=滋賀・多賀中出身=が処理して一塁に送球したが、一塁塁審はセーフの判定。悲鳴と歓声がこだました。
東北のダルビッシュ有(現大リーグ・レンジャーズ)以来、10年ぶりの快挙を逃した溝田は「日頃の行いが悪いからだと思う」と悔しがった。
マウンドでは優等生
中学2年の時、同じ甲子園球場で行われた大会でも「あと2人」でノーヒットノーランを逃したことがあった。同じことが2度も起これば「甲子園はすごいところ」というしかない。
それでも、2年生ながら強豪チームのエースナンバーを背負う責任は十分過ぎるほど果たした。チームは11-0の完勝。岡田龍生監督(52)は「気持ちの強い選手で球に力がある」と褒めた。
兵庫県姫路市出身の溝田は、大阪市内で下宿生活をしている。勉強では英語が苦手で「追試になった」と小さな声で打ち明けたが、マウンドでは3年生も頼りにする〝優等生〟になった。
■プロフィル みぞた・ゆうと 1997年4月30日、兵庫県姫路市生まれ。中学時代に「姫路アイアンズ」で3年夏に全国制覇。履正社では1年秋から背番号1。右投げ右打ち。172㌢、73㌔。