10月12日に日本に上陸した台風19号は東日本の広い範囲で記録的な大雨をもたらした。死者は13都県で87人に上り、8人が行方不明となっている(10月29日現在)。年代が判明した死者のうち7割超が60歳以上だった。
140カ所で堤防決壊
13都県の自治体で大雨特別警報が発表され、各地で河川が氾濫。福島県の阿武隈川や長野県の千曲川など堤防決壊は7県の71河川140カ所、住宅被害は全半壊が4087棟、一部損壊が4941棟、床上浸水は3万2640棟だった。土砂災害も20都県690カ所で起き、近年では経験したことのない大規模災害となった(29日現在)。
治水対策の見直しを
川の傾斜が急で雨が多い日本では洪水が起きやすく、堤防やダム整備などが進められてきた。整備計画は過去のデータなどを基にしているが、今回の大雨はそれらの想定を上回るものだった。気候変動による雨量の変化などもあり、被害を検証した上で従来の「想定」を見直した治水対策を策定する必要がある。また、復旧作業に時間がかかっている送配電線の脆弱さも今後の課題だ。
新幹線120両が被害
企業の災害対策の課題も浮き彫りになった。JR東日本では北陸新幹線の全車両30編成の3分の1に当たる10編成120両が水に漬かった。車両の床下にはブレーキや空調を制御する装置、変圧器など走行に欠かせない重要な機器が搭載されており、東京―金沢間の直通運転は25日にようやく再開したが全面復旧の見通しは立っていない。車両が被害を受けた長野新幹線車両センター(長野市)はハザードマップで深さ10メートル以上の浸水が想定されており、専門家は「被害は予測できた。首都直下型地震などは意識していても、水害への対策は不十分」と水害に対する危機感が薄かったと警告する。