鈴木寛人(茨城・霞ヶ浦3年)は今夏、エースとしてチームを4年ぶりの甲子園に導いた。2年次までは苦しい時期もあったが、壁を乗り越えて心身ともに成長を遂げた。10月17日のプロ野球ドラフト会議で広島東洋カープから3位指名を受け、国内最高峰のステージにその第一歩を踏み込む。(文・写真 小野哲史)

我慢の時期、乗り越え

鈴木は長身から投げ下ろす最速150キロの直球と、キレ味鋭いスライダーが持ち味で注目されている投手だ。霞ヶ浦には、「投手の育成に定評がある」と聞き、進学を決めたと振り返る。入学当初の目標は「公式戦で投げること」。甲子園出場やエースになるという思いは、当時はまだ持てなかった。

1年の夏までは思うようなパフォーマンスができず、「我慢の時期」だった。同学年の投手陣に刺激を受けながら苦境を乗り越えたが、2年の春には練習試合で右手の指を負傷。約2カ月間の戦線離脱を余儀なくされた。

それでもめげず、復帰後は「約30mの距離でも落ちないボールを投げる立ち投げ」「50㎝ほどの棒を持ったシャドーピッチング」といった部の伝統的な練習メニューを地道にこなし、投手としての土台を着実に築いていった。

長い手足を生かし、初速と終速があまり 変わらない直球とキレのある変化球、さ らに高い制球力が魅力の鈴木寛人

会話で緊張打ち消す

公式戦で投げる機会が増え、練習試合で強豪校を抑える度に「自身の成長を感じた」という。2年生のころは試合前、緊張すると自分の世界に入ってしまうことが多かった。だが、3年になってからは他の選手と会話を交わし、リラックスができるようになるなど、課題だったメンタル面も徐々に克服。試合が始まると、自然と気合が入るようになった。今年度からエースナンバーの背番号1を背負い、自然と「甲子園」という明確な目標を持てるようになっていた。

夏の県大会では大車輪の活躍を見せた。4試合に登板し、防御率は0.96。1試合平均で1点も取られなかった。14対0という圧勝で甲子園行きを決めた常磐大高との決勝戦は「高校生活で一番の思い出になった」と語る。

雰囲気よくして勝つ

硬式野球部の高橋祐二監督は鈴木に向けて、「プロは『俺が、俺が』というタイプじゃないと生き残れない世界。遠慮せずに、でも今まで通りこつこつやって、数年後に1軍で投げられる投手になってほしい」とエールを送る。鈴木の目標は、2学年上の遠藤淳志(広島東洋カープ)で、今でもLINEで連絡を取り合う。再びチームメートとなる先輩のように「登板したらチームの雰囲気が良くなって勝てる投手」を目指している。

普段の一日のスケジュール

6:30 起床 朝食後、自主練習

8:40 教室に着席

15:20 授業終了

15:50 練習開始

19:30~20:00頃 練習終了

夕食後、自主練習

21:30 食堂で点呼・掃除

21:45 自由時間

23:00 消灯・就寝

Q&A 刑事ドラマが好き

Q 野球の面白さは?

A 「相手がこういうスイングをしているから、ここに投げよう」など、考えないとできない奥深さが面白さでもあり、難しさだと思います。

Q 集中力を高めるコツは?

A 他のことを考えないようにします。だから普段から野球をしていない時は野球のことはなるべく考えず、オンとオフを切り替えています。

Q オフの日の過ごし方は?

A 帰省できる時以外は、寮の部屋で寝て過ごすことが多いです。

Q 好きな教科は?

A 数学と英語です。中学の時に塾で習っていたのもあり、理解できると楽しくなります。

Q 好きな食べ物は?

A から揚げです。好きな物を食べられる時はよく食べています。

Q 野球以外で趣味は?

A テレビで刑事ドラマなどを見るのが好きです。

すずき・ひろと

 

2001年10月7日、茨城県生まれ。兄の影響で小学2年から野球を始め、下館西中時代は筑西田宮ボーイズに所属。関東大会に出場した。右投げ右打ち。186センチ79キロ。