萩生田(はぎうだ)光一文部科学大臣は11月1日、現高校2年生が受ける2021年度入試(20年度に実施)から導入する予定だった、英語民間試験を入試に活用する仕組みの導入を延期することを決め、発表した。民間試験の受検や準備に経済事情や住む地域による格差が生じかねないと高校側の不安の声が高まっていたことなどを受けて決めたという。現高校2年生は11月1日から、民間試験受検のためのID登録を始める予定で、直前の延期は、国としてきわめて異例の決定だ。

地域や経済状況による格差が指摘されていた

文部科学省が導入する予定だった制度「大学入試英語成績提供システム」は、国側が認めた民間の英語資格・検定試験のいずれかを高校3年生の4~12月の間に2度まで受けてもらい、結果を大学入試センターがとりまとめて大学に提供するというもの。いわゆる「英語4技能」(読む・聞く・話す・書く)を直接測る民間試験の入試での利用を増やすことで、高校での指導の後押しとする狙いがあり、四年制大学の7割が何らかの形での利用を予定していた。

だが、全国の高校でつくる全国高校長協会が「各検定試験の実施日や実施場所の情報が明確になっていない」「地域格差、経済格差をはじめとした諸課題が解決する見通しは立っていない」などと多くの問題点を指摘し、延期を求める事態になっていた。

頑張って勉強してきた高校生に「申し訳ない気持ち」

萩生田大臣は記者会見で、「現時点において経済的な状況や居住している地域にかかわらず、ひとしく安心して試験を受けられる配慮など、文部科学大臣として自信をもって受験生の皆様におすすめできるシステムになっていない」と述べ、延期を決めたことを説明した。

高校生に向けては「私の耳には、これまで頑張って英語の勉強をしてきた高校生の声も届いています。みなさまにご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ない気持ちです」と謝罪した。

2025年度入試からの導入を目指す

文部科学省では、大臣のもとに検討会議をつくり仕組みを抜本的に見直し、現在の中学1年生が受ける2025年度入試(24年度に実施)から英語4技能を測る試験の導入を目指すという。