7月の全国高校総体(インターハイ)に38年ぶりに出場した高崎女子(群馬)バレーボール部。昨年度の県予選決勝でマッチポイントを握りながら敗れて以降、「1点を取り切ること」を意識し、自分たちで考えて練習に取り組んでいる。(文・写真 小野哲史)

体力強化し粘り強く

コンビをあわせる
効果的な攻撃を繰り出すには、セッターとアタッカーとのコンビが不可欠。互いの特徴をよく知り、トスの高さやスピード、質を確認する。

公式戦が近くない時期は、ウオーミングアップの後に倒立やブリッジ歩行、お尻歩きなどで体力強化を図る。学校周回コースのランニングや、校庭でのダッシュといった朝練習でのラントレーニングも含め、心身はかなり鍛えられるため、主将の丸山理(あや)(3年)は「最後の最後までプレーし続ける粘りが身に付いた」と語る。

ゲーム形式の練習では22-22など、セット終盤の競り合った場面を想定。「いかに1点を取りにいくか」を全員で共有し、臨機応変に考えてプレーする。この成果が発揮されたのが、6月のインターハイ予選の準決勝と決勝だった。「リードされる展開でしたが、目の前の1点に集中して戦うことで逆転勝ちできた」(丸山)

3対3で守備力アップ

3人対3人
でラリー1人あたり通常の2倍のエリアを守り、レシーブ、トス、スパイクと本来のポジション以外の役割も求められる。2人対2人や4人対4人で行うこともある。
競り合いを想定
1点の重みをより意識するために、ゲーム形式はセット終盤の競り合いを想定したスコアから行う。

通常、コートには6人が入るが、人数を減らしてラリーし合うメニューもある。この日は3人対3人で行った。金子愛(3年)はその狙いを「守備では広いエリアをカバーしなければいけない上、次に攻撃するためには、レシーブ直後の2本目をどう処理するかが大事。誰が入っても、トスやスパイクなど、どの役割もできるようにしています」と話す。「粘り強さが磨かれた」ことに加え、各選手の技術の向上も実感している。

インターハイを終え、丸山と金子を除く3年生は受験に専念する。取材日は春高バレー予選に向けて、新たなチームづくりが始まった時期だった。セッターとして期待が懸かる江本愛菜(2年)は「私たちの新しいバレーで県大会4冠を目指したい」と意気込み、アタッカー陣とコミュニケーションを取りながら、コンビを合わせる作業に余念がなかった。

トレーニング
10数種類のメニューがあり、その中からランダムで1日5、6個を行う。体をうまく使いこなすことが狙い。体幹なども鍛えられ、けがの防止にもつながる。

同校は進学校でもある。「遠征で移動中のバス内や日頃の隙間時間を利用して、勉強も全力で臨んでいる」(丸山)と明かした。

 

 

丸山理(あや)(3年/主将・ライト)「ブロック利用して決め切る」

 

2年生までセンターでしたが、今のチームになってライトにコンバートされました。ライトは、ストレートにスパイクを打てないといけないので、その練習には力を注いでいます。また、どうしても相手ブロックにつかれるため、ブロックをはじいたり利用したりして決め切ることを意識しています。

インターハイに出場し、相手は強いチームばかりでしたが、その中でも通用できるプレーもありました。でも、足りない部分も多かったので、インターハイ以降はその課題克服に取り組んできました。

金子愛(3年/副主将・レフト)「レシーブは重心を落としてプレー」

 

レフトは攻撃も守備も両方をしっかりできないといけないポジションです。スパイクでは早いタイミングで出てしまうことが多いのが今の課題。しっかり待って打つ体勢を作ることを心がけています。レシーブでは上体が浮いてしまうので、重心を落としたままプレーすることです。ゆっくりプレーしている時はできるので、速い動きになったときに特に意識してできるようにしています。

もともとメンタルは強い方ではありませんでした。でも、タフな練習を続けてきたことで、技術や体力だけでなく、メンタルも成長できていると思います。

 

江本愛菜(あいな)(2年/セッター)「身長生かし相手ブロックをつぶす」

 

小学生の頃はセッターで、中学でスパイカーになり、高校から再びセッターになりました。セッター経験は少ないですが、身長とジャンプ力には自信があります。そこを生かして、高い所からの速いトスで相手ブロックを散らし、スパイカーが攻撃できるプレーをできるように心がけています。

先輩たちにインターハイに連れていっていただき、とても良い経験になりました。春高バレーを目指す今のチームは、インターハイまでとはメンバーが替わり、また違った攻撃力や機動力があります。セッターとして、そこをうまく使って新しい攻撃の形を作っていきたいと考えています。

石原裕基監督「部員自身で判断させる」

 

私は3年生が入学した年に赴任し、今年で3年目です。チームでTシャツを作った際、英語で「求め続ける勇気があれば、すべての夢は実現できる」という意味の言葉をデザインしました。この学校に来て増やしたのはラントレーニング。選手にとってはきつい練習ですが、これによって最後の苦しい所で頑張れる力が今まで以上についていると思います。

日頃、私から指示を出すことは多くありません。試合でもタイムアウトは自分たちで取るようにさせています。しっかり考えることができる子たちなので、「こういう状況だからこうしよう」と決断する場面をできるだけ増やしてあげることを心がけています。そうした力は将来、社会に出てからも生かせるはずです。

取材日の練習の流れ

16:15~
ウオーミングアップ、トレーニング(倒立、ブリッジ歩行、2人一組で手押し車など)
17:00~
動きながらパス練習
17:15~
3人対3人でラリー
17:40~
スパイク練習
18:00~
ゲーム形式
18:40~
クールダウン
19:00前
練習終了

TEAM DATA

 

1929年創部。部員20人(3年生9人、2年生5人、1年生6人)。春高バレー出場1回、インターハイ出場3回。横断幕に掲げる言葉は校歌にある「勇みこそ行け」。練習日は週3回の朝と平日放課後の毎日(週1日は治療日としてフリー)。週末は他校への遠征が多い。