風邪やインフルエンザは不安の種。本格的なシーズンが到来する前に、予防法やかかってしまった際に知っておくべきことを、感染症・呼吸器内科医の川名明彦先生に聞いた。

 

風邪を治すには安静が一番

風邪症候群は頭痛や発熱、せき、喉の痛みなどの症状が出る、さまざまな病原体による感染症の総称だ。インフルエンザウイルスの感染で起こるのがインフルエンザで、高熱や関節痛、筋肉痛などの症状が出る。

インフルエンザには予防注射と治療薬がある。病院を受診し、迅速診断キットで診断がつけば、適切な治療薬を処方してもらえる。

一方、普通の風邪は、症状は比較的軽いが、予防注射や根本的な治療薬はもちろん、どのウイルスによる感染なのかすぐ診断する方法もない。病院で処方してもらえるのはせきや発熱、鼻水などの症状を和らげる薬や、複数の症状に効く成分を配合した合剤だ。合剤は市販の総合感冒薬と成分がほとんど変わらない。「病院で2時間待って薬をもらうより、市販の総合感冒薬を飲んで自宅で安静にしていた方がよいという考え方もあります。インフルエンザ以外の風邪を治すにはおとなしく寝ているしかないのです」

ワクチンの効果は半年

インフルエンザの予防注射は、インフルエンザにかかる人数を6割くらい減らす効果が
ある。残りの4割の人は予防注射を打ってもかかってしまうが、症状が軽く済むことが多
い。「特に高校生はワクチンの効果が出やすい年代ですから、打たない手はありません。
効き目は約半年で、毎年11月頃までには病院に入荷します。すぐに打てば春まで十分に
効力が続くでしょう

インフルエンザの治療薬は主に「リレンザ」「タミフル」「ラピアクタ」「イナビル」「ゾフルーザ」(いずれも商品名、発売順)の5種類。それぞれ服用方法や回数に違いがあるため、どれを使うかは患者の状態によって医師が判断する。なお、近年流行しているインフルエンザはA型2種類、B型2種類の計4つのタイプだが、予防注射、治療薬ともすべての型のインフルエンザに効力がある。

人混み避けて予防

インフルエンザや風邪の「薬物によらない予防方法」として効果が実証されているのは、マスクと手洗い、人混みを避けること。「うがいには科学的根拠はありませんが、効果がない証拠もありません。習慣になっている人には続けることをお勧めします」 (野口涼)

 

川名明彦先生 

かわな・あきひこ 防衛医科大学校病院感染症・呼吸器内科診療部長。防衛医科大学校内科学講座(感染症・呼吸器)教授。医学博士