熊本県水俣市では、高校生が自主的に集まり、募金活動を始めた(4月24日、水俣市の生協水光社前=椎名桂子撮影)

「熊本の復興のための募金に協力をお願いします!」。4月24日、買い物客でにぎわう熊本県水俣市の商業施設の入り口に高校生が立ち、よく通る声で呼び掛けていた。一連の地震で水俣には大きな被害は出ていないが、県内での大災害はもちろん、ひとごとではない。1人の高校1年生の発案から、学校を超えて約30人に支援の輪が広がって実現した募金活動だ。(椎名桂子)

入学間もなく臨時休校「自分にできることはないか」

募金活動を思い立ったのは、栄碧海さん(八代高校1年)。4月に高校に入学したばかり。授業を一度も受けないうちに地震が起き、学校は臨時休校になってしまった。

水俣市の自宅で震災の報道を見るうちに「何か自分にできることはないか」という気持ちが日増しに募った。水俣市の社会福祉協議会に足を運び、大学生の募金活動に加えてもらった。

「高校生にもできるかも」と思い、同じ中学出身の友人、山下あみさん(熊本高等専門学校八代キャンパス1年)に相談して実施を決め、21日にツイッターで告知を始めた。初めは反応が鈍かったが、2人だけでも行動する覚悟だった。

中学も高校も違う生徒たちがツイッターで名乗り

場所を水俣駅近くの2つの商業施設の入り口に決め、運営者に電話すると、快く許可してもらえた。許可の取り方は、社協で知り合った大学生が教えてくれた。日時と場所を発信したころから、ツイッターで参加を希望する人が増え始め、前日までに26人に達した。希望者は皆、水俣出身だったが、出身中学も通う高校もばらばら。栄さんたちと直接面識のない高校生も「熊本復興のため」と集まってきた。「思った以上に多くてとてもうれしかったんですが、うまくまとめられるかと不安にもなりました」(栄さん)

学校の活動ではなかったが、「私服より、自分たちの気持ちが伝わる」と制服着用を決めた。

募金活動をする熊本県水俣市の高校生たち(4月24日、椎名桂子撮影)

お年寄りから子どもまで声掛けてくれた

当日は日曜だったこともあり、買い物客が次々に訪れた。お年寄りから小さな子どもまでが次々と募金箱に寄付金を入れ、「お疲れさま」「頑張ってね」と声を掛けてくれた。当日になって「手伝うよ」と言って参加してくれた人もいた。参加者は皆、精いっぱい声を張り上げた。午前10時から午後3時までの5時間で57万3973円を集めることができた。

翌日には、市の社協に行き、集まった募金を被災地に義援金として送るよう託した。その時、水俣市長から「話が聞きたい」と声が掛かり、面会することにもなった。

募金活動終了後に撮影。参加者から「また何かやりたいね」という声も出た(提供写真)

福島の友達との交流が力に

今回、素早く行動できたのは、中心となった2人が、中学時代に交流授業で福島に行った影響もある。福島で出会った中学生が復興のための募金活動などをしていたことを思い出し、「高校生にもできることがあるはず」と行動できたのだ。福島の友達は、今回の地震発生後もLINEで、余震への備えについてアドバイスをしてくれた。

できることで励まし合いたい

栄さんは「大きな被害を受けた熊本市には、中学の時にお世話になった先生や友達がたくさんいる。自分たちが水俣でできる活動をすることで、少しでも力になれたらと思いました。みんなに少しでも元気になってほしい」と語る。

山下さんは「地震の時、私もすごく怖かったんですが、LINEでの友達からの励ましがとても心強かった。同じ学校にも家が壊れた子や、避難所におにぎりを届ける支援をした子もいます。LINEでも募金でも何でもいい。自分たちにできることで励まし合い、支え合えたらいいと思います」と話す。

「連休明けには現地への「ボランティアバス」が水俣からも出るようなので、自分も参加したい」と栄さん。福島で出会った中学生たちがそうだったように、今回は熊本で自分たちが復興のためにできることをやっていく。高校生にもできることは必ずあるはずだから。