吹奏楽とマーチングの両方で全国屈指の実力を誇る千葉・市立柏高校吹奏楽部(通称イチカシ)。200人を超える部員を擁し、年間60回以上のイベント出演をこなしながら、大会でも結果を出す高校吹奏楽界のレジェンドだ。(文・写真 青木美帆)

■演奏会のチケット 即完売

部員数238人。今年度の主要大会で4度の日本一を獲得し、出演依頼は2年先までいっぱい。主催コンサートのチケットは1万3000枚が完売するという。

その「すごみ」は、徹底した音作りから生まれる。管弦楽器の肝ともいえる「ピッチ(音程)」を全員が完全に合わせる確認練習に、4時間弱の練習時間のほとんどを充てる。「入部した時は『こんなに地味なことを繰り返すのか……』と、精神的なダメージがすごかったです」と部長の飯野尚倫君(3年)は笑うが、その積み重ねが透明感のある美しいサウンドを育む。

そこからワンフレーズごとの気持ちの込め方や奏法を統一していく。「例えば、楽しさを伝えたいときは音形を軽くしたり。人によって考え方が違うので、時には言い合いになることもあります」(飯野君)。200人超の生徒が本当の意味での「たった一つの音楽」を奏でるために、いつでも必死なのだ。

 

■手抜きの演奏はしない

大所帯にもかかわらず、全員に役割があるのも特徴だ。練習計画を立てるセクションリーダー、楽器運搬のトラックを手配する運搬係、イベントの交渉担当の行事係、野良猫にエサを与える猫係(!)などなど……。

11人が幹部として部を切り盛りするシステムは、一般企業のよう。演奏に関しては、人数制限がある大会に出場する「赤組」と「青組」、マーチング専門の「白組」に大きく分けられ、人数制限のない吹奏楽の大会には全員で出場する。全員が主力だ。

華々しい受賞歴が目立つが、「地域のお祭りや保育園での演奏も、気持ちは大会と一緒。手抜きはしない」と、指導する石田修一総監督は語気を強める。全てのステージで全員が全力投球するために、地味で緻密な練習を何千時間も積み上げる。それがイチカシの実力の源なのだ。

部長:右側

■部長のことば

イチカシの特徴は楽器を動かしながら演奏すること。お客さんにどう見えているか、細かい動きまで常に意識して練習するので、すごく神経を使います。動きも音作りも妥協しない。その密度の濃さ、繊細さは当事者ながらすごいなと感じます。

部活データ: 1978年創部。部員238人(金管99人、木管108人、弦6人、打楽器25人)。モットーは「美しい音楽は美しい環境から」。今年度は全日本高校選抜吹奏楽大会グランプリ、日本管楽合奏コンテスト最優秀グランプリ、全日本吹奏楽コンクール金賞、全日本高校吹奏楽大会 in横浜グランプリなど受賞。