学校や家庭での人間関係がうまくいかない、勉強や部活で思うような成果が出せないなど、いろいろなストレスを抱えている高校生や中学生は多いのではないだろうか。どうすればストレスにうまく対処していけるのか、高校でスクールカウンセラーを務める公認心理師・臨床心理士の斯波涼介さんに聞いた。 (安永美穂)
愚痴はこぼせた方がいい
――そもそも、ストレスとはどんなものなのでしょうか?
1枚の板に左右から力をかけると、折れることはなくてもたわんでいる状態になります。ストレスとは、心に負荷がかかり、不自然に力が入った状態を指します。体育の時間に校庭を走ることを、運動が好きな人は楽しくても、苦手ならばつらく感じるというように、「何をストレスと感じるか」は人によって異なります。
――ストレスに強い人と弱い人との違いは?
一概には言えませんが、「自分はこれが嫌なんだ」と自覚できる人は、自覚できない人よりもストレスに強いといえます。愚痴をこぼすのは、「これが嫌」と自覚できているという意味では、よい側面もあります。時間が解決してくれるのを待つだけでなく、ストレスの解消・解決方法を具体的に考えられる人はストレスに対処しやすいといえるでしょう。
体の病気がないか受診を
――ストレスがたまると、どのような症状が出るのでしょうか?
ストレスがかかり過ぎると自律神経がうまく働かなくなり、頭痛や腹痛、不眠・過眠、食欲が増す・なくなるなど、さまざまな症状が表れます。ただし、これらの症状は病気が原因で生じる可能性もあるため、まずは病院で診断を受けることが大切です。
「登校前におなかが痛くなる」など、ストレス状態を避けようとする症状がみられることも多いです。ストレスを受け止めずに済むよう、感情が違う方向へ向かってしまってイライラしやすくなることもあります。
「解消」と「解決」は違う
――ストレスを解消・解決するには、どうすればいいですか?
まずは、「解消」はその時の気持ちに対処することで、「解決」は問題そのものへの対処だという区別をしておきましょう。ストレスに対処するには、解消を適度にしつつ、解決に向けた取り組みも進めていくことが重要です。
何をすればスッキリできるかは人によって違います。解消法を考えるときは「やり終えたときの自分が後悔せずに済む方法」を選びましょう。喫煙や飲酒など法律に違反することはもちろん、お金や時間がかかり過ぎることは、ストレス解消法としては適しません。自分に合った方法を見つけたら、「それをするまでの時間を思いっきり楽しみにして過ごすこと」もストレス解消につながります。
ストレスを解決するには、自分が追い込まれてしまう前に、適切な人や機関に相談することが大切です。信頼できる人に頼る経験をするのは、社会に出てからストレスに対処する上でも重要です。悩みを相談する練習をするつもりで、困ったときはスクールカウンセラーや養護の先生などに話を聞いてもらいましょう。
取材後記 つらいと相手に伝えることは弱さではない
相手の行動を変えるのではなく、自分の行動を変えよう。これだ!というストレス解消法は人それぞれ。ストレス解消法をした結果どうなってしまうのかを考えよう...などなど貴重なお話をたくさん聞け、とても参考になりました。聞いたお話を頭で思い浮かべながら、ストレスに立ち向かっているとこれまでとは違い心が軽くなりました。
自分が苦手なことで周りに迷惑をかけると思うとストレスになるときの考え方として、「自分が何かを得意な立場の時、苦手な人のことをどう思うか考えてみる」という言葉が特に印象に残りました。自分が話しやすい相手に今つらいんだと伝えること、それを伝えることは弱い人間になる訳ではないということも、たくさんの高校生に知ってもらいたいです。(高校生記者・佐々木愛理=3年)
斯波涼介さん
しば・りょうすけ 公認心理師・臨床心理士。公立高校のスクールカウンセラー、障害者施設やカウンセリングルームなどで相談や検査の仕事をしている。