早稲田大学国際教養学部の池島大策学部長にお話しを伺いました。

池島大策学部長

「開設から15年目を迎えた国際教養学部(SILS)は、早稲田大学の中では新しい学部で、非常にチャレンジングな学部です」と語るのは池島大策学部長だ。「学生は理系から文系まで幅広い科目を学び、自分の興味に合う分野を探していきます。中でも大きな特徴が2つあるんです」と続ける。

1つは、英語で学ぶこと。学部生のうち、約3割が外国籍の学生で、帰国生も約3割を占める。さらには教員の約4割も外国人だ。この環境において、ほとんどすべての授業が英語で行われている。「唯一日本語で受けられる授業は、1年次の『基礎演習』のみ。留学生・帰国生を除く日本の学生は日本語で受講でき、アカデミック・ライティングなどを学びます」

2つ目の特徴は、日本語を母語とする学生に1年間の留学が課せられること。同学部では、1年を春・秋の2期に分けるセメスター制を採用し8つのセメスターで4年間を構成。4月入学者の場合は、主に2年次の9月から1年(2学期分)を海外で学ぶ。留学先は世界各国・地域700大学以上と圧倒的なスケールだ。

「かなり徹底した国際教育を展開していますが、英語力の高い留学生や帰国生だけをターゲットにしているわけでは決してありません」と話す池島学部長。むしろ日本の教育機関として日本の学生を国際的かつ多様性のある環境で育成し、グローバルな人材を輩出することが学部のミッションだと考えているという。

早稲田の中でも異彩を放つ多国籍学部

英語を使って学ぶスタイルは現在でこそ国内に増えてきているが、同様の学部との違いは、1学年約600人、4学年を合わせると2400人にもなる大所帯であること。これに交換留学生やダブルディグリー生(日本と海外の大学それぞれで学位を取得すること)も加えて、年間3000人ほどが在籍する。もはや小規模な大学並みの多国籍なコミュニティだ。

多言語・多文化を学ぶプログラムで多様性を理解

同学部の特徴はそれだけではない。全員が英語、日本語(母語)以外の第3言語を学び、非英語圏に留学する学生も少なくない。実に27の言語を学ぶことができ、アイヌ語やバスク語といった少数言語の授業もある。また、新たな試みとして、フランス語、スペイン語、中国語、朝鮮語については、「APMプログラム」という、その国の文化、歴史、経済、政治などをその言語で学ぶ内容言語統合教育(CLIL)を展開し、多言語・多文化教育に注力している。

「英語だけできればよいわけではありません。グローバルに考えれば、英語が通じない地域も多いのです。世界の多様性を認めるためにも複数の言語や文化にふれてほしい。本学部で学ぶ人には、視野を広くもつことを求めているからです」

答えのない課題を解決するそのための考え方や術を学ぶ

また、学びの特徴は自由度の高さにもある。科目は「生命・環境・物質・情報科学」「哲学・思想・歴史」「経済・ビジネス」「政治・平和・人権・国際関係」「コミュニケーション」「表現」「文化・心身・コミュニティ」の7つのクラスター(科目群)に分かれ、それぞれの科目は「入門」「中級」「上級」の3つのレベルがある。履修するクラスター数に上限はなく、1年次には最低3つの異なるクラスターから授業を選択。その後は自らの興味に沿って科目を絞り、専門性を高めていくのだ。

池島学部長は力を込めて話す。「今は先の見えない不確実な時代です。ずっとグローバリゼーションはよいものとされてきたのに、ここ数年は反グローバル、反民主主義、保護主義が現れ、欧米を中心に外国人の排斥なども目立ちます。こうした問題への答えは教科書には載っていません。本学部ではそうした社会の問題を解決するための考え方や術を修得します。そのため宿題や課題が多く、厚い本も読まなければなりません。ですから、本学部のプログラムや実績をよく調べ、覚悟をもって志望してください。その代り、手厚くサポートしますし、同じように苦労した先輩が相談にのってくれる制度も設けています」

先輩に聞く

国際教養学部3年 奥津直人さん(東京・佼成学園高校出身)

 

大学に入学するまで海外経験がなかったので、1年次はリスニングに苦労しました。内容が理解できないと授業について いけないので、積極的に質問をするよう心がけました。2年次の9月からアメリカのオレゴン州立大学で、政治学をメインに学んできました。現地の学生と比べて圧倒的に知識量が少ないことに気づき、予習・復習の他、読書量を増やして対策を。留学を終えて、今は自分の思っていることを言語化して発信する力がついたと思います。