文部科学省や経済産業省など、近年国をあげて育成に力を入れているのが「理工系人材」。とくに産業界では理工系人材の需要が高まっている状況だ。そんな理工学系学部の特徴を紹介しよう。

「理学」と「工学」の違いは?

まず「理学」と「工学」の違いを大まかに説明しよう。理学は自然界のさまざまな現象に関する謎を解き明かし、根本的な原理や法則などを探究していく学問で、一方の工学は理学の知識を応用し、モノづくりや技術開発を行っていく学問である。

大学の理学部には、主に数学、物理、化学、生物、地学などを学ぶ学科があり、高校で学んだ内容をさらに発展させた、高度かつ専門的な研究を行っていく。

工学部に設置されている主な学科には、自動車やロボットなど機械の設計・製作や制御を学ぶ「機械工学系」、モーターから家電製品まで幅広い分野を研究対象とする「電気・電子工学系」、コンピュータのソフトウェア開発や情報通信技術などを研究する「情報・通信工学系」、建物の設計やデザインを学ぶ「建築学系」、道路や鉄道など社会の基盤となる大きな建造物の設計・施工を学ぶ「土木(都市基盤、建設)工学系」、新素材の開発などに取り組む「応用化学系」、ITや数理的手法を駆使して企業経営のシステム化を考える「経営工学系」などがある。

さらに最近は、医療現場で役立つ機器などを開発する「医療工学系」のように、複数の学問領域を組み合わせて学ぶ学科も増えており、さまざまな分野に貢献できる道が開かれている。なお、大学によっては理学部と工学部の学科を併設する「理工学部」を設置しているところもある。

高い就職率が魅力
研究職を目指すなら大学院進学が望ましい?

日々進化する科学技術の世界をリードし、グローバル社会で活躍するためには、最先端の知識や高度な技術の習得が必要不可欠だ。そこで、大学の中には、世界に通用する優秀な技術者を育成しようと、「JABEE(日本技術者教育認定機構)」の認定を受けた学科やコースを設置しているところもある。JABEE認定プログラムを修了すると、国際的な水準を満たした質の高い技術者教育を受けたことが保証され、国家資格である「技術士」の第一次試験が免除される。

また、大学院に進学する人が多いのも理・工学系の特徴で、進学率は約4割に上っている。特に最近は、研究者を目指す人だけでなく、企業への就職を希望する人でも大学院に進学するケースが増えてきた。これは、企業の中で研究・開発職として働くためには、より高い専門性やスキルが求められるようになってきたからだ。大学院修士課程修了を応募条件にしている企業も少なくない。

理系の就職は景気の影響を受けにくく堅調で、平成28年3月学部卒業者の就職率も98.2%と高い(図表参照)。また、文部科学省と経済産業省が共同で設置した「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」では、産業界のニーズとのマッチング方策、専門教育の充実や、産業界における博士人材活用の促進など、理工系の学部で学んだ学生たちが、より就職後に活躍できるよう議論、今後も育成に力をいれていくことを示している。日本がイノベーションを創出し、産業の国際競争力をより高めていくためにも、理系の力は今後ますます必要とされそうだ。

(図表)過去5年間の文理系別就職率