2020年夏季五輪のマラソン日本代表をしっかり見据え、大阪薫英女学院陸上競技部の大森菜月(3年)=大阪・豊中十六中出身=が高校最終年度で未来への足固めに入った。 (文・写真 宇佐見英治)

15歳までは一人で走っていた。中学時代も陸上部員だったものの、部としての活動がほとんどなかったという。小学生の時の陸上クラブのメンバーやコーチに支えられ、一人ぼっちではなかったが、個人で練習を続けていた。「だから自分の調子次第で練習量を増やしたり減らしたりしていました」

高校に進学し、全国高校駅伝に当時4年連続4回目の出場を果たしていたチームの一員となった。「高校で、仲間というかライバルがいると、スピード練習などをしても“負けたくない”と頑張れる」という環境に変わった。

走るフォームがよく、実業団チームの関係者から将来性を買われているという。いくつかの大学からも進学を勧める声があがって、正直迷っている。

迷いがないのは、いつかマラソンで五輪に出場する目標だ。「マラソンをするには4年ほど下積みが必要ですから、次の次のオリンピックですね。(8年後の)26歳あたりで狙いたいと思います」と展望する。安田功監督(50)は「今の時期から、将来はオリンピックでマラソンに挑戦したいと公言できるのは、それだけの意志があるということ」と感心し「目標に進む気持ちを大事にしてやりたい」と成長を支えている。

昨年度の駅伝シーズンは、12月の全国高校駅伝でエース区間の1区(6㌔)を走り、チームは9位でゴール。年が明け1月の全国都道府県対抗女子駅伝は大阪チームの5区(4.1075㌔)をトップのまま駆け抜け、19年ぶり2度目の優勝に貢献した。

今年度の春から夏、トラックレースで「自己ベストを更新して花を咲かせたい」。その向こうに冬の駅伝を思い描く。さらなる先にマラソンが見える。

この6月に18歳。走る自分は今も一人だが、そばに仲間・ライバルがいる。大森は高校で強さと輝きを増した。

メモ

大阪薫英女学院陸上競技部 大阪薫英女学院の長距離選手の通常練習は「快適なスピードで集中して走る」ことが特色。追い込みすぎず「腹八分目を毎日集中して行い、年間トータルでたくさん練習できるように」というのが安田監督の方針だ。松本彩花(2年)と松田瑞生(同)も注目ランナーで、大森とともに今年1月の全国都道府県対抗女子駅伝で快走した。

2020年五輪 国際オリンピック委員会(IOC)が5月23日に理事会を開き、東京、イスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)の3都市に絞られた。最終選考は来年9月7日のIOC総会で。2016年夏季五輪はリオデジャネイロ(ブラジル)開催が決定している。

おおもり・なつき 1994年6月22日、大阪府生まれ。大阪薫英女学院3年。自己ベストは1500㍍4分28秒35。3000㍍9分16秒34。中学時代から成績も良く「国語が得意、面白いと思うのは日本史です」。162㌢、 44㌔。