相模原中等教育学校(神奈川)クラシックギター部は、全国学校ギター合奏コンクールで4年連続最優秀賞を得ている強豪校だ。100人を超える大所帯をどうまとめて演奏を磨き上げているのか聞いた。(文・写真 野村麻里子)
指の痛み乗り越えて
ギターアンサンブルは、小さめのアルトギター(高音域担当)、プライムギター(中音域担当)、親指で弾くバスギター(低音域担当)など、複数の種類のギターを用いて合奏する。
同部のほとんどの部員がギター未経験で入部してくるという。初めにぶつかる壁は、弦を押さえる左手の指先が痛むことだ。「僕はギタロン(弦が太くボディーも大きい低音域の弦楽器)を担当していますが、初めは指1本では無理で、2本指で押さえていました」(部長の矢野義紘君、5年=高校2年)。左手の指先を見せてもらうととても硬く、左右で指の太さも異なる。基礎練習をひたすら繰り返すことで、違和感なく演奏できるようになったという。
初心者はギターを構えるフォームが崩れがちだが、間違った姿勢が定着してしまうと直しにくい。「フォームが崩れていたらしつこいほど伝えています」(学生指揮者の織戸和香奈さん・5年)。先輩が後輩を朝練習に誘うなど、細かく声をかけて配慮することで、部員のレベルアップを図っている。
合宿で闇練・森練
現在、8月の全国大会に向けて「パガニーニの主題による狂詩曲」を練習中だ。学生指揮者が曲の場面ごとにどう弾くかをまとめたプリントを配っている。「冒頭は悪魔の気配が迫ってくる感じで弾く」など、部員全員で曲のイメージを持てるようにするためだ。
大会前には山梨県で3泊4日の合宿を行う。夜には部屋を暗くして聴覚だけを頼りに演奏する「闇練」、森の中で自然を感じながらメロディーを歌う「森練」などを行い、曲の完成度を上げていく。
呼吸で音が変わる
中学生に相当する学年も入れると100人を超える部員がいる。人数が多いと「一人一人の音が全体の演奏に影響する」という意識がどうしても薄れがちだ。「ですが、部員一人でも欠けたら僕たちの演奏ではなくなってしまう。自分の音が曲を作っているという意識を持つように働きかけています」(学生指揮者の兎澤望夢君・5年=高校2年)
意外に思うかもしれないが、ギターアンサンブルは呼吸も大切だ。音を出すタイミングを合わせるために一体となって息を吸ったり、大きい音を出すときは大きく、鋭い音の時は短く、ゆったりした音を出すときは深く吸ったりする。
目と目で通じ合う
拍子に合わせて楽しそうに体を揺らして演奏をする。弦を弾く右手に感情を込めて動かす部員もいる。「音を響かせているんだよと視覚的に表現するために、右手で円を描くようにしています」(矢野君)
また、演奏中に「アイコンタクト」をする。ハモったり、掛け合うパートの部員と視線を交わすのも特徴だ。「はじめは(アイコンタクトが)気まずかったけれど…目が合うと相手がニコって笑ってくれるんです。一緒に弾いている感じがします」(織戸さん)
5年生の学年合奏として、Frank Mills作曲の「Spanish Coffee」を披露してもらった。相模原中等教育学校の母体高である「相模大野高校」時代から続く伝統曲だ。指揮は兎澤望夢君。途中でギターをくるっと回すパフォーマンスも必見!
部活データ
部員115人(5年生24人、4年生17人、3~1年生[中学生]74人)平日3日の放課後と土曜日。今年の全国高校総合文化祭管弦楽部門に出場。「よい演奏は生活習慣から」(兎澤君)と、あいさつや感謝の心、ギターを大切に扱うことなども心がけている。公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/user/SSSCGC)で演奏動画を視聴できる。