所沢高校演劇部は、校内外での公演に向けて年間2、3の演目に取り組む。昨年末の関東大会では優秀賞に輝いた。
演目は、各部員が気になる演劇脚本を持ち寄り、全員の話し合いで決めていく。取材の日は、春季演劇発表会(4月開催)での上演に向けて「七人の部長」(越智優作)のけいこの真っ最中。教室に照明や音響機器を持ち込み、本番さながらの空間の中、1シーンを繰り返し演じる「部分練習」が行われていた。
裏設定で完成度高める
この作品は、部活動予算会議に集められた7人の部長が繰り広げる痛快コメディー。高校演劇で長く愛されている作品だ。剣道部部長役を演じた水村早希さん(部長・3年)は「コミカルな会話劇が作品の肝。演者同士の会話のテンポが一つ狂うと、笑いを誘うシーンの面白さが半減するので、そこは重点的にけいこを重ねます」と話す。
劇中のストーリー展開には直接関係ないが、登場人物の相関図を細かく作成するなど「裏設定」を考える時間を設けている。役柄の人物像を深く掘り下げて役づくりに生かすためだ。生徒会長兼手芸部部長役を演じた渡邊里穂さん(3年)は「私の役は面倒見が良さそうなので、弟がいる設定で演じています」と話す。「セリフがない時の舞台上での自分の動きも考えます。この役だったら、どんな所作をするだろうって」(渡邊さん)
部員同士で指摘し合う
部の普段の雰囲気は「やんわり、ゆる~く」(水村さん)。そんな居心地の良い環境が、学年関係なく気付いたことを言い合える空気を作り出している。けいこ中には、顧問の雨宮正治先生による演技指導はもちろん、部員同士で「声の大きさ注意ね」「目線に気を付けて」と、注意が飛び交う。音響や照明を担当する裏方の部員からも演技への指摘が積極的に入る。
一方、「今の動き、めっちゃ面白い!」「前より良くなってる!」といった前向きな声も掛けられ、演技が磨かれていく。「部員からの声で自分の演技がより良くなっていく。それが部全体の成長につながるんです」(水村さん)
(文・写真 中田宗孝)
部活データ
1954年創部。部員19人(3年生9人、2年生6人、1年生4人)。活動日:週4日。昨年12月の第54回関東高校演劇研究大会では、「プラヌラ」(高石紗和子作、とこえん潤色)を上演し、4校が受賞する優秀賞を獲得。