チャオ! イタリアのインターナショナルスクールに2年間留学中の一丸です。今回は、ルーマニアに住むマイノリティーの子どもたちと触れ合った経験を紹介します。(一丸暖歌・3年)

ルーマニアで差別を受けるロマ人の子ども

マレーシア人の友達と一緒にルーマニアの首都、ブカレストに行ってきました。「プロジェクトウィーク」という学校の取り組みの一環です。全校生徒200人が10人程度のグループに分かれ、ヨーロッパ全体でそれぞれの目的を達成するために活動します。一週間の学習旅行、とイメージしてもらえば良いでしょうか。活動はグループによって全く異なり、130キロのハイキングといった運動系から、セルビアの難民キャンプで支援活動を行う社会奉仕系までさまざまです。

私たちは、「ロマ人」というマイノリティーの子どもたちに施設でアクティビティを行うプロジェクトを運営しました。

ロマ人とは、俗に言う移動型民族のうち最大勢力の民族です。ルーマニアはロマ人が最も多く暮らす国として有名で、それに伴う貧困やロマ人に対する差別が根強いのもまた事実です。これは、ロマ人の多くが定住せず、また差別を恐れて公的な登録をしないゆえに、医療等の公的サービスを受けられない、非正規の仕事に就かざるをえない、などの社会問題が生み出されているためです。

1週間とはいえ、子どもたちと絆をはぐくんだ

人種差別、女性差別の言葉、浴びせられた

私のグループが働かせてもらった施設は、ブカレストで最も治安の悪いエリアにありました。処理のできないゴミが道中に山積している、ガラスが割れ、タイヤが抜き取られた車が点在しているなどの光景が衝撃的でした。

街中は物乞いをする人々であふれています。私たちは一目で外国人と分かるグループなので、人種差別的、女性差別的な発言をしながらこちらの後をひたすら付けてくる若者たちも。そんな中、施設に着くと、4歳から10歳までの子どもたちが目を輝かせて歓迎してくれました。こちらの「円になって」などの呼びかけに素直に集まってくれたのも覚えています。また、片言のルーマニア語を話すと一生懸命発音を直し、さらに新たな単語を教えてくれる無邪気な姿に私たちもますますやる気になりました。

子どもたちは楽しんでくれたけど…

今回の目的は、「学校と自分にポジティブなイメージを持ってもらえるようなアクティビティを提供すること」です。例としては、計算問題が途中で待ち受ける障害物レースや、自分の良いところを言ってもらう他己紹介など。

毎日違うアクティビティを2時間分用意すること、さらに子どもの興味を引きつける態度を常に意識することは慣れておらず大変でした。子どもたちが積極的に取り組んでくれたおかげで私たちのプロジェクトは成功を収めました。しかしやはり、様子をのぞきに来た少年が他の子が活動している様子を鼻で笑い、しまいには私に性的に挑発するような暴言を吐いて、部屋を退出するなどの一面もありました。
 

子どもたちに絵を描いてもらうアクティビティを実施

クラス環境はサバイバル、自分に無力さ感じた

ふとしたことから、日常生活を営む環境が全く異なるのだ、と突きつけられる場面が何度もありました。「悲しい」と感じる状況を描くアクティビティを行った際に、ルーマニアの国旗や自分の家を描く子どもがいました。バッグから7500円相当の現金が抜き取られたメンバーもいました。

子どもたちの暮らす環境は「サバイバル」という言葉がぴったりくるものでした。メンバーの一人は、自分のことを慕ってくれる女の子が、笑顔で手を振りながらホームレスの子どもを引き取る施設に入る様子を見て、涙を流していました。

今は愛情を求めて全力でぶつかってくる子どもたちが、数年後には麻薬や性犯罪等に巻き込まれているかもしれないという現実。無力さを感じざるをえませんでした。しかし、自己嫌悪感を抱いて反社会的な考えを持ったり、逆に「子どもたちを信じていれば大丈夫!」と安易に考えたりすることは、偽善的ではないかとの考えが発展した方が大きい気がします。

貧困や非行などに対峙(たいじ)する時、私たちはあくまで部外者。勝手にこちらの価値観やルールを持ち込むのでは通用しません。これは例えば震災支援の際にしばしば起こる、ありがた迷惑な支援物資の支給などの問題にも言えることだと思います。それぞれの実態に合わせ、現実的かつ効果的に社会問題に取り組むことの難しさを感じさせられた貴重な一週間でした。