大会出場を通じて「アンサンブルする力が高まった」と口を揃える8人

岡山学芸館高校(岡山)吹奏楽部木管八重奏8人は、3月に札幌で開催された「第42回全日本アンサンブルコンテスト」(全日本吹奏楽連盟など主催)高校の部で金賞に輝いた。美しい旋律を追い求め、細部までこだわり抜いた演奏はどうやって磨かれたのか。大会までの歩みを聞いた。 (文・写真 木和田志乃)

リーダーはあえてなし

大会で披露したのはゴードン・ジェイコブ作曲の「ディヴェルティメント」。技術的な難易度の高い曲だ。昨秋は全日本吹奏楽コンクールや定期演奏会があったため、本格的に練習を始めたのは12月に入ってからだった。個人の練習は始業前や昼休みに自主的に行い、放課後はパート別、また同じ動きをするパート同士で練習してから8人で合奏した。木管八重奏のチームには、昨年の同コンテスト中国大会に出場したメンバー4人ら実力者がそろう。しかし「いると頼ってしまう」(剣持慶乃さん・3年)からリーダーは決めない。

活発に意見を言い合う

練習時、活発に意見を交わす。改善点が提案されればすぐに「やってみる」と試し、4分半の演奏が単調にならないように、軽やかさや忙しさ、壮大さ、不思議さなど、さまざまな表情を付けた。CDで聞き、魅力を感じたベルリンフィルハーモニーの音に近づけるように息を吹き込む量や速さを調節して音色を作った。

練習中は明るく率直に意見を出し合う

テンポ合わずピンチ

「アンサンブルの難しさの1つは指揮者がいないことです。だから演奏者全員のテンポ感を合わせることが大事です」(松野乃彩さん・3年)。しかし、1月下旬、8人のテンポが合わなくなり、音がずれるようになってしまった。岡山大会、校内の発表会を経て、「緊張感が途切れてしまったのが原因」(松野さん)だった。

そこで全員が楽器を持たずに歩きながら各自のパートの旋律を歌ってテンポ感を合わせ、ずれを解消した。また、音の響きや各パートの音量も、ポジションによって聞こえ方が変わる。1人ずつ演奏の輪の中に入って、全体の音のバランスを確認するなど工夫した。

細部の表現にこだわり

全国大会前日まで妥協しなかった。テンポが速く音符が細かい部分があり、クラリネットとオーボエのパートがうまく合わなかった。クラリネットを担当する吉田亜美さん(3年)は「本番では合わせるポイントを決めて、そこだけは絶対に合わせる、という気持ちで吹きました」と振り返る。

そのかいがあり、本番では美しい旋律を響かせた。「『キター!』と思いました。アンサンブルは一人一人の責任が重い。しかし木管の細かい表現が可能になり、演奏者のこだわりが見えるところが魅力です」(吉田さん)

【部活データ】1974年創部。部員152人(3年生52人、2年生46人、1年生54人)。全日本吹奏楽コンクール16回出場。金賞5回。2017、18年連続金賞。国際交流も盛んで海外の吹奏楽団、合唱団と共演。ベルリンフィルハーモニーホール、ウィーン学友協会でコンサート開催。

ミニQ&A あえて「緊張する」と言う

――本番直前はどんな様子ですか?

 緊張していることを隠そうとすると余計に緊張するので、緊張しているメンバーは「緊張する」と言うようにしています。

――メンバーではやっていることはありますか?

 変顔を写真に撮ったり、WEB漫画をおすすめしあったりしています。ふだんは音楽以外のたわいもない話をしています。

――顧問の先生への思いを一言。

 プレッシャーのかけ方が優しい。いつも思いやりを持って接してくれるので感謝しています。