「音楽は自分を成長させてくれる。毎日ピアノに感謝して過ごしている」と話す堀田君

堀田海斗君(愛知・旭丘高校3年)は1月、「第20回ショパン国際ピアノコンクール inASIA」(組織委員会主催)の高校生部門でソリスト賞に輝いた。小学生の頃から大会に参加し、念願の受賞を果たした。高校ではワンダーフォーゲル部に所属し、登山の経験をピアノの演奏に生かしているという。ピアノも部活も勉強も頑張る姿を伝える。( 文・写真 木和田志乃)

弾ける喜びが原動力

ピアノを始めたのは6歳の時。テレビCMから聞こえてくる曲をおもちゃのピアノで弾くようになったことがきっかけで、レッスンに通い始めた。

小学生の頃は1日10時間に及ぶ練習に、逃げ出したくなることもあった。しかし、技術を獲得すれば弾けなかった曲が弾けるようになる喜びが勝り、練習を続けてきた。

欠けていたのは楽しさ

堀田君が「大好き」というショパンの曲で出られる同コンクールには、小学5年生で初挑戦した。中3の受験期を除き毎年出場してきたが、受賞はかなわなかった。それでも、「運がなかっただけ」とポジティブに考えて挑戦し続けた。

今年のコンクール直前に受講した5日間のセミナーで講師から「技術的にも表現的にもそこまで問題はないが、何か足りないものがある。楽しそうに弾いていない」と指摘された。

賞を取ることが目的になり、練習でも単に「指が速く回らなきゃ」「もう少し強弱を付けよう」と技術面ばかり意識していたことに気づいた。そこで、本番ではのびのびと弾くことを心掛け、6度目の出場で初受賞を果たした。

人前で話すのは苦手だが「ピアノのおかげで少しは慣れた」という

ワンゲル部、山で感動

登山に興味があったことから、高校ではワンダーフォーゲル部に所属している。一番思い出深い活動は、1年の秋に登った八ヶ岳だ。明け方、雲海の上に浮かぶ富士山と、朝日が作り出す幻想的な光景に心を奪われたという。曲を弾く時に「この部分は山で素晴らしい景色を見た時の感情と似ているのではないか」と気づくことも多く、登山経験が音楽に生きているという。

学業にも熱心に取り組む。「勉強すると考え方や視野が広くなり、それが曲の理解や解釈の助けになると感じています」

海外でピアノ弾きたい

最近は、受験勉強とピアノの練習を両立している。限られた時間を効率的に使うため、コンクール曲を集中して練習する。譜面とは違うリズムで弾くなどして、弱い指を鍛える。「打鍵の強さや音符の長さを微妙に変えながら曲に込められた思いをどのように表現したらよいのか模索しています」

将来は、好きな数学を生かせる分野に進学を希望する。ピアノも続けるつもりだ。「ピアノの素晴らしさの一つは言語が違っていても伝わること。海外に住んで世界中の人たちとピアノの魅力を分かち合えたら」

ほった・かいと 2001年4月16日生まれ。2015年岐阜国際音楽祭コンクールピアノ専門コース中学生部門1位。2017年ショパン国際ピアノコンクールin ASIAコンチェルトB部門アジア大会銅賞。2018年ピティナピアノコンペティションF級全国大会出場。

Q&A RADWIMPSが好き

――好きな作曲家は?

 ショパンです。哀愁漂うメロディが好きです。

――J-POPは好きですか?

 はい、RADWIMPSを聞きます。あまり行く機会はないですが、カラオケも好きです。

――憧れるピアニストは?

 旭丘卒業生の内匠慧さんや務川慧悟さん。

――コンクール本番の前はどのように過ごしますか?

 自分が家で弾いたコンクール曲の録音を聞いています。

――大切にしている言葉は?

 「ありがとう」です。