日々のメンタルトレーニングで培った前向きな気持ちで練習し、挑戦を続けた各パートリーダーの3年生たち

東海大学菅生高校(東京)吹奏楽部は昨年、第66回全日本吹奏楽コンクール(全日本吹奏楽連盟など主催)高校の部で初の金賞、第24回日本管楽合奏コンテスト(日本音楽教育文化振興会主催)高校A部門で最優秀グランプリ賞・文部科学大臣賞に輝いた。演奏技術を高めるだけでなく、メンタルトレーニングも取り入れた練習で部員の心を充実させ、「菅生サウンド」を磨いている。 (文・中田宗孝、写真・幡原裕治)

アンサンブルコンテストに向けて練習を重ねる、管楽8重奏の1・2年生部員たち

先生の手を見て表現

放課後、150人を超える部員が各教室に分かれ、パート別の練習を始める。加えて他の楽器の部員と一緒に「パーツ練習」にも取り組んでいる。「演奏曲の中で、私たちが課題とする曲の一部のみを複数の楽器で繰り返し合わせて完成度をより高めます」(前副部長の星陽華さん、3年)

全ての楽器がそろう合奏練習では、奏者は「(練習では)タクトを使わずに手で指揮する」と言う顧問の加島貞夫先生の「手の動き」に見入りながら演奏する。「彼らには『譜面を見ないで僕を見てごらん』と伝えます。手の動きを見て、譜面には書かれていない、僕が表現したい音を作るためです」(加島先生)

星さんは「先生の手の振り(指揮)は細やか。振り方を見て、ここは音を抑える、ここは気持ちを一番込めるんだと感じることができます」と話す。

顧問の加島貞夫先生がマスコットキャラになっている

歌や手拍子で一体感つくる

自主参加の朝練は、奏者同士のリズム感の共有が目的の「楽器を使わない歌練習」に励む。部員は演奏曲のメロディーをハミングしながら、メトロノームに合わせて手拍子や足踏みでリズムを刻む。この練習の積み重ねが、本番での合奏の一体感を生むという。

心の調子を整える

約10年前から導入したメンタルトレーニングも重視する。練習前の全体ミーティングの最後は、必ず「今日の調子は?」「絶好調!」とコール&レスポンスをする。さらに、部員同士でハイタッチ。「ポジティブな言葉を発して、演奏に臨むモチベーションを上げます。授業から部活への気持ちの切り替えもできます」(星さん)

前部長の野田蓮君(左)と前副部長の星陽華さん

どんな時も前向き

前部長の野田蓮君(3年)は、普段から自らの心の在り方を意識してきた。「(部長の立場の)自分が暗い顔や極度の緊張をしていると、それが他の部員に伝染してしまう。どんなときも前向きに、笑顔でいることを心掛けました」。良い精神状態を保つ効果について加島先生は「部全体が元気になり、部員一人一人が主体的に考えて動けるようになります。そんな、底抜けに明るい彼らを見ていると、僕自身もやる気が湧いてくるんです」と話す。

野球部の応援の際に行う踊りを習得中
【部活データ】 1983年創部。部員158人(3年生50人、2年生42人、1年生66人)。3年生は11月で引退。強豪で知られる同校野球部の応援演奏は原則、全部員で参加。好機には「かっぽれ佞武多(ねぶた)」をアレンジした「菅生MIX ∨」を演奏し、球児たちを後押しする。
きらきらした笑顔で日々練習に励む部員たち