政府は昨年末、鯨の資源管理をしている国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、約30年ぶりに商業捕鯨を再開すると発表した。管義偉官房長官は脱退理由を「鯨資源の持続的利用の立場と保護の立場の共存が不可能であることが明らかになり、決断に至った」としている。しかし、戦後一貫して国際協調主義を掲げてきた日本が、自国の主張が受け入れられないことを理由に国際機関を脱退するのは異例だ。
全国7カ所で7月から
今年7月から再開する商業捕鯨は、日本近海や排他的経済水域(EEZ)内でミンククジラなど3種類を対象とし、IWCの方式で算出した捕獲枠内で実施する。拠点として北海道・網走や山口県・下関など全国7カ所を想定する。反捕鯨国からの批判が強かった南極海の調査捕鯨は撤退する。
IWCは1982年に商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)を決め、日本は88年に商業捕鯨から撤退し、科学的データを収集するための調査捕鯨を続けてきた。昨年9月のIWC総会で商業捕鯨再開などを提案したが否決され、脱退を検討してきたとされる。
反捕鯨国は強く反発
政府は脱退後もIWCにオブザーバーとしてとどまり資源管理を行うとしているが、英国やオーストラリアなど反捕鯨国は激しく反発。6月に大阪で開催を予定している主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)や2020年の東京五輪・パラリンピック、さらに、参加国に反捕鯨国の多い環太平洋経済連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)への影響を懸念する声も出ている。