第97回全国高校サッカー選手権決勝が1月14日、埼玉スタジアムで行われ、青森山田(青森)が流通経大柏(千葉)に先制されながらも3-1で逆転勝ちし、2年ぶり2度目の優勝を飾った。大会開幕1カ月半前に主将が変わったチームだが、そこで気持ちを一つにして日本一へとたどり着いた。(文・茂野聡士、写真・幡原裕治)

試合を決めたのは、背番号10の「元主将」檀崎竜孔(3年)だった。流通経大柏の関川郁万(3年)のヘッドで先制を許したが、檀崎は前半40分に同点ゴールを奪うと、後半18分にはバスケス・バイロン(3年)のラストパスを巧みにゴール右隅へと蹴り込んで決勝ゴールを奪った。

決勝ゴールを奪った檀崎竜孔

「重圧は預かる」 エースと守護神の友情が優勝を引き寄せた

最後に主役となった檀崎だが、大会前の12月に大きなショックを味わっていた。チームは、昨夏の全国高校総体(インターハイ)で逆転負けを喫し、その後の公式戦でも振るわない戦いが続き、黒田剛監督は主将交代を決断。得点源でもある檀崎の負担を軽減する意図があったが、檀崎は「正直、切り替えるまで時間がかかりました」と明かす。

支えたのは、副将から主将に昇格した守護神の飯田雅浩だ。主将交代後、2人だけのミーティングの場を持った。「主将交代には本人も驚いていましたが、主将でエースの竜孔がチームを2年半ずっと支えてくれていました。『重圧を少しでも軽くできればいい』という思いで『主将の重圧は預かるよ』と言葉を掛けました。檀崎は涙を流しながら、ありがとうと言ってくれました」という。

檀崎は「やることは変わらず、チームを引っ張る存在としてのプレーを見せつけようと切り替えました」と、勝利に直結するプレーに意識を向けた。それが決勝での2ゴールにつながった。

試合後、歓喜に沸くイレブンの中で、飯田は試合前から準備していた「ある行動」を取った。「竜孔が普段着けていたキャプテンマークを用意して、表彰式後に巻かせたんです」(飯田)

この計らいに檀崎も「本当にありがとう」と伝えたという。エースと守護神の2人が個性の強いチームメートをまとめ上げたからこその、日本一奪還だった。

表彰式後、スタンドに手を振る檀崎。この時だけは檀崎の左腕にキャプテンマークが巻かれていた
【TEAM DATA】
1918年創部。部員171人(3年生55人、2年生51人、1年生65人)。今年度の高円宮杯プレミアリーグEASTで2位に入るなどユース世代屈指の強豪。OBに今年のアジアカップ日本代表の柴崎岳(ヘタフェ)や室屋成(FC東京)ら。 
青森山田高校サッカー部のメンバー