政府が提出した外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が臨時国会の焦点となった。外国人労働者は昨年10月時点で約127万9千人に上る。なぜ今、外国人労働者を増やす必要があるのか。また、受け入れ拡大にはどのような問題があるのだろうか。
働き手不足が深刻化
少子高齢化と人口減少に伴って働き手不足が進み、産業界から強い要望が出ている。特に、建設業や製造業、造船業などは労働力不足が深刻とされる。
このため、既に建設業や製造業などは、途上国の人に日本で技術や知識を身に付けてもらうことを目的にした「技能実習生」として受け入れている。コンビニや飲食店でも多くの外国人が働いているが、大半が留学生で一定時間まで認められる「資格外活動」として働いている。
単純労働に門戸拡大
従来は就業目的の在留資格は「教授」や「経営・管理」などの高度人材といわれる分野に限られていたが、新制度では単純労働の分野にも門戸が開かれる。
政府は、対象とする介護や建設業、農漁業など14業種と、最大34万5150人の受け入れ見込み数を公表した。これらの業界は、仕事のきつさや低賃金などの理由で人材確保に苦労しており、外国人への期待は大きい。しかし、求められる技能などの受け入れ用件などは固まっておらず、新制度を十分に活用できるかは不透明だ。
劣悪な環境が問題に
外国人を雇用する企業は、日本人と同等以上の報酬の支払いや福利厚生の提供が求められる。だが、現行の制度下では、技能実習生が低賃金で東京電力福島第1原発事故に伴う除染作業に従事させられたケースや、週100時間以上働かされて月額9万円の給与しかもらえないなどのケースが出ている。劣悪な労働環境、賃金未払いで失踪する外国人労働者は後を絶たない。
医療・年金制度の見直しも大きな課題だ。日本の社会保障制度は外国人でも加入できる。健康保険では、日本に住んでいない配偶者や子どもなど扶養親族が日本や海外の医療機関を受診しても1~3割の負担で済む。また、扶養されている配偶者は保険料負担なしで年金を受給できる。社会保障費がさらに増大することへの懸念は強い。