近畿陸上競技選手権の100メートル障害に出場したヘンプヒル恵(写真右)=9月6日、和歌山県紀三井寺公園陸上競技場

女子七種競技のヘンプヒル恵(京都・京都文教3年)=京都・京都文教中出身=が、今夏の全国高校総体(インターハイ)で大きな飛躍を遂げた。ジュニア日本記録を更新して2連覇を果たし、単独種目の100メートル障害も制して2冠を達成。速くてタフな高校陸上界の新ヒロインは、東京五輪に向けてまだまだ走り続ける。
(文・写真 中尾義理)

日本記録の更新目指す

七種競技は、100メートル障害や走り高跳びなど7種目の記録を得点化して合計得点で競う。 インターハイで、ヘンプヒルは100メートル障害を13秒57、走り高跳び1メートル62などの記録を出して5519点を獲得。従来の高校記録(5384点)のみならず、日本ジュニア記録(5404点)も更新した。翌日の100メートル障害も13秒72で制し、夏を全力で駆けた。
 それでもまだ、ヘンプヒルは満足していない。世界で活躍し、東京五輪に出場することを目指しているからだ。「世界に出るために何をしていくかを考えています。来年4月からは大学に進学し、卒業までに6000点を超えないと東京五輪で世界と戦うのに間に合わない」
 日本人の七種競技での五輪出場は、2004年アテネ五輪の中田有紀のみ(28位)。世界の壁は厚く、五輪に出場することも難しい。だが、開催国には、その年に国内1位を記録した選手に出場権が与えられる。まずは日本記録の5962点を更新することが目標だ。七種競技と並行して、得意の100メートル障害でも五輪を目指す構想もある。

たくさんの人に見てほしい

 

七種競技や100メートル障害で好記録を残せるのは、普段の練習のたまもの。ハードル走を日課とし、200メートル5本など走る練習も欠かさない。
 同級生には昨年のインターハイ走り幅跳び2位の加藤伊織(3年)=滋賀・能登川中出身=がおり、跳躍の専門練習にも加わって技術を高めてきた。
 ただ、陸上競技一色の生活では息が詰まる。「競技から離れると結構だらだらしています。音楽を聴いたり、絵を描いたりする時間も好きです」と、オンとオフを上手に切り替える。
 仲間や、指導する内田典子先生に支えられてここまで来た。6年後をどんなふうに想像しているのか。「(東京五輪に出場して)七種競技をもっとたくさんの人に見てもらいたい。そして、見ている人に『あいつ、やるやん』ってところを見せたい」。彼女の瞳は今から輝いている。

♥へんぷひる・めぐ
1996年5月23日、京都生まれ。アメリカ人の父と日本人の母を持つ。中3時の全国中学大会で四種競技優勝。2013年世界ユース七種競技7位。14年日本選手権100メートル障害は13秒47で3位。400メートル障害は高校歴代8位の58秒59を誇る。

七種競技とは
100メートル障害、走り高跳び、砲丸投げ、200メートル、走り幅跳び、やり投げ、800メートルの七競技を二日間で実施。各競技の記録をポイント化して合計得点で競う。世界記録は7291点。