放送部などで活動する高校生が作品制作やアナウンスなどで日本一を目指す第65回NHK杯全国高校放送コンテスト(全国放送教育研究会連盟、NHK主催)の全国大会が7月24日から26日まで行われ、6部門の優勝者・優勝校が決まった。(文・写真 野村麻里子)

コンテストはアナウンス、朗読、ラジオドキュメント、テレビドキュメント、創作テレビドラマ、創作ラジオドラマの6部門で実施された。都道府県大会には1633校1万6009人が参加し、勝ち抜いた533校が全国大会に進んだ。

6部門で優勝した生徒たち(表彰式にて)

 

ラグビーの魅力語る卒業生を取材

アナウンス部門で優勝したのは、橋本由紀さん(大分舞鶴高校3年)。ラグビーワールドカップの広報活動をしている卒業生を取材し、ラグビーの魅力や楽しさを伝える自作原稿を読み上げた。
 朗読部門では、赤瀬智咲さん(広島・呉三津田高校2年)が優勝。オカメインコと人々のふれあいを描く「リボン」(小川糸著)から、死産した女性が亡くなったわが子に対面するシーンを読み上げた。

日航機墜落事故で亡くなった先生の生きた証を伝える

ラジオドキュメント部門で優勝したのは、武庫川女子大学附属高校(兵庫)の作品「あの夏の記憶」だ。日航機墜落事故で亡くなった同校教員について、当時を知る教員や生徒に、先生はなぜその飛行機に乗っていたのか、事故が分かった時の状況などを取材。先生の遺族が贈呈したトレーニングマシーンを今も生徒が使っていることや、遺族からのメッセージを紹介した。代表生徒は、「いろいろな人の記憶を起こして作った。先生は頑張って生きてきたという証の記憶をみなさんに伝えたい」と語った。

障害ある家族のケアで葛藤する高校生に密着

テレビドキュメント部門では、桜丘高校(三重)の「ヤングケアラー‐高校生の葛藤‐」が優勝した。ヤングケアラーとは、障害や病気などの家族をケアしている若者のこと。母が入院しているため、家事を担いながら重度の知的障害がある妹のケアをする男子高校生などを取材した。「妹のせいと思う時もある…」「かわいい時もある」と葛藤する様子をていねいに描いた。放送部代表の生徒は、「冗談で『ガイジ』という言葉を使う高校生がいる。(そんな状況があるから)ケアラーは誰にも相談できない。軽々しく使わないでほしい」と伝えた。

恋をして成長する男子高校生を表現

創作テレビドラマ部門は、神奈川・法政大学第二高校の作品「影松伸男の成長記録」が優勝した。地味で目立たない生徒を「蛾」、明るく目立つ生徒を「蝶」に見立て、自分は蛾だという男子高校生が、初めて「ありがとう」と言ってくれた女子生徒に恋をして、自分を変えようと奮闘。蝶、蛾だと二分する考えは間違いで、それぞれが持つ個性の大切さに気付いていく。主人公のコミカルな演技に会場は笑いに包まれた。

ラジオDJの高校生が母の悩みに気づく

創作ラジオドラマ部門では、札幌新川高校(北海道)の作品「親知らず」が優勝した。自分の部屋から、親の悩みを解決するラジオ番組を放送する男子高校生が主人公。「子供が一緒にお風呂に入ってくれなくなった」などと寄せられるリスナーの悩みを解決していく。「まともに話をしてくれない」という悩み相談をする相手が実の母親だと気づき、母の思いにふれる様子を描写した。代表生徒は「ラジオ番組らしさを表現し、軽快な雰囲気を出せた」と話した。

各部門の結果は次の通り(「優秀」以上を掲載、敬称略)

【アナウンス部門】
▽優勝 橋本由紀(大分・大分舞鶴高校3年)
▽準優勝 時永恭伸(兵庫・小野高校3年)
▽優秀 矢嶋桃子(北海道・札幌北高校2年)、長谷川友季(富山・桜井高校3年)

【朗読部門】
▽優勝 赤瀬智咲(広島・呉三津田高校2年)
▽準優勝 森夢衣(宮崎・宮崎南高校3年)
▽優秀 大島あるる(神奈川・神奈川総合高校2年)、木村太飛(青森・北斗高校3年)

【ラジオドキュメント部門】
▽優勝 兵庫・武庫川女子大学附属高校「あの夏の記憶」
▽準優勝 広島・呉三津田高校「Adagio Cantabile 愛情を込めて」
▽優秀 北海道・帯広柏葉高校「トイレの音って気になりますか?」、岩手・盛岡第一高校「法螺貝JK」

【テレビドキュメント部門】
▽優勝 三重・桜丘高校「ヤングケアラー‐高校生の葛藤‐」
▽準優勝 兵庫・御影高校「ポケット格差」
▽優秀 兵庫・松蔭高校「神戸×ノート」、広島・尾道東高校「八十七年の調べ」

【創作ラジオドラマ部門】
▽優勝 北海道・札幌新川高校「親知らず」
▽準優勝 北海道・札幌国際情報高校「雨音」
▽優秀 宮﨑・延岡星雲高校「明日へのうた」

【創作テレビドラマ部門】
▽優勝 神奈川・法政大学第二高校「影松伸男の成長記録」
▽準優勝 三重・松阪高校「Sライン」
▽優秀 佐賀・早稲田佐賀高校「delete」