早稲田大学は2018年6月7日、2021年度一般入試(20年度に実施)からの改革を明らかにした。各学部で入試改革を検討しており、このうち政治経済学部は出題科目を全面的に見直す。センター試験の後継となる大学入学共通テストで数学など4科目を全受験生に課す一方で、長年実施していた大学独自の教科の試験は取りやめる。かわって、教科の枠を超えた新たな独自試験を始めるという。

共通テストの数学など必須に

文部科学省は、21年度入試から大学入学共通テストを導入するほか、一般入試や推薦入試のルールなどを変更する方針で、各大学の対応が注目されている。

早稲田大政治経済学部の一般入試は現在、英語、国語、世界史、日本史、数学の大学独自の試験を実施し、3科目の総得点で合否を決めているが、21年度以降は出題を大幅に変更する。

まず、高校で学んだことが身についているかを確かめるために、大学入学共通テストを全受験生に課し、外国語、国語、数学Ⅰ・Aを必須とし、選択科目も含め原則4科目(配点100点)を受けてもらう。数学を必須にするのは初めて。これまでも学部入試の選択科目として数学を選ぶ人は多かったが、学部教育で統計など数学を用いた分析方法の教育を重視しているため必須にしたという。

入試改革について発表する早稲田大学政治経済学部の須賀晃一学部長(中央)ら

長文を読み解く独自試験を実施へ

また、学部で学ぶ力をみるために、カリキュラムの特色をふまえた独自試験を実施する。具体的には、教科の枠を超えて日本語と英語の長文を読み解く独自試験(配点70点程度)を導入する。英語で図表を読み解かせたり、日本語の社会科学的な思考を問うたりする考えで、記述解答を含む。文章を読んだうえで自分の考えを述べる問いも想定している。英語の民間の資格・検定試験(外部試験、配点30点程度)も全員に課す。学部教育を日本語と英語の両言語で行う方針をふまえた改革という。

幅広く学んでいる人が受けやすい入試に

国語、英語など3教科を独自試験で課す入試は「私大文系型」と言われ、同様の入試制度をとる大学は少なくない。その中でも早稲田大の政治経済学部は歴史など難問の出題でも知られたが、改革によって「受験勉強を長くする必要はなくなる。高校の勉強をしていれば大学入学共通テストは解ける。大学独自の試験も特別な対策が必要な問題にはしない」(西郷浩・政治経済学部教務主任)という。須賀晃一・政治経済学部長も「『早稲田の政経の受験勉強』をしないと通らない入試から幅広く勉強している人が受けやすい入試に変えたい。高校では幅広く基礎を学んでもらい、そのうえで考えてもらう入試にしたい」「高校で(テーマを決めて研究や発表をする)探究学習が進めば新しい独自試験には十分対応できる。今は高校で討論など主体性を重んじ、思考力を鍛える教育が行われても、高校3年生になると大学受験のための勉強で分断されてしまっている。そういう無駄をやめたい」などと話す。

国際教養学部も一般入試の全受験生に大学入学共通テスト(国語と選択1科目)と英語の民間試験を課すほか学部独自の英語の試験を実施する。スポーツ科学部は、一般入試を3種類に分け、いずれも大学入学共通テスト(2~4科目)を必須にする。