藤枝東(静岡)サッカー部は、日本代表の不動のキャプテン長谷部誠ら多くのプロ選手を輩出した名門で、これまでに全国高校選手権に24回出場経験がある。自分たちが主導権を握るスタイルが特徴だ。日々の練習で自分たちを追い込み、レベルアップを図っている。 (文・写真 茂野聡士)

日々変わるパス練習

同一年度で全国高校総体(インターハイ)、国体、選手権を制する高校3冠に史上初めて輝いた実績のある同部は、勉学とサッカー両方に励む文武両道の部活だ。主将のMF鈴木大河(3年)や小林公平監督らが異口同音に「ボールを保持して、攻撃を仕掛けていく形を目指しています」と話す通り、積極的にパスをつないでゴールを狙っていく。

パス練習に決まった形はない。日によって距離や形を少しずつ変える。実戦で求められる体力と、冷静にプレーする柔軟性を磨き上げるために、「目的意識を持って臨むことが大事」(MF平尾拳士朗・3年)と取り組んでいる。

 

パス練習

約15㍍四方のスペースでパスを送り、受け手がトラップして再びパスをつなぐ。シャトルラン後で体力が減っている中、精度とスピードを落とさないことが実戦につながる

体力落ちても正確に

「プレーしている選手だけでなく、見ている人たちも楽しめるようなサッカー」(平尾)を、長年にわたって築き上げてきた。だが、単に「楽しんで」トレーニングしているわけではなく、2時間半の練習時間で強度の高いメニューをこなしている。取材に訪れた日は、走りを中心としたメニューが組まれていた。

特にハードだったのは、ピッチの幅をいっぱいに使い、全力疾走とジョギングを20分以上繰り返すインターバル走。GKの選手には、合間でスクワットが課されるなど部員たちは険しい表情を浮かべていたが、小林監督、鈴木らが発した言葉が印象的だった。「苦しい時こそ楽しんで!」

インターバル走の直後のパス練習では、その意図が強く伝わった。「体力が落ちていても正確なパスとトラップを意識して、自分のイメージ通りのプレーを求めています。それができるからこそ、楽しいサッカーにつながると考えて練習しています」(鈴木)

鈴木は「目標は全国に出るだけではなく、頂点に立つこと」とも話す。必要な技術、フィジカル、考える力を総合的に高めて一歩でも近づこうとしている。

 

ステップワーク

サッカーでは方向転換など、攻守両面で俊敏な動きが必要なため、さまざまなステップを体に染み込ませていく。地道な練習だがボールタッチなどの素早さがアップする

 

シャトルラン

ピッチの幅をいっぱいに使って全力疾走とジョギングを繰り返し、試合で走り抜くスタミナを強化する。ジャンプ力を求められるGKは合間にスクワットをすることもある

取材日の練習の流れ

16:00 ウオーミングアップ
 16:10 ステップワーク
 16:25 インターバル走
 16:50 シャトルラン
 17:20 パス練習、ボールコントロール
 17:55 体幹トレーニング
 18:15 クーリングダウン
 18:30 練習終了

 
【TEAM DATA】1924年創部。部員90人(1年生30人、2年生27人、3年生33人)。月曜日のオフ以外は同校の人工芝グラウンドで練習に臨む。部訓は「至誠一貫」。主なOBは中山雅史(J3沼津)、河井陽介(J1清水)ら。