今の高校1年生が大学受験に臨む2020年度から、大学入試センター試験にかわる新たな共通試験「大学入学共通テスト」が始まる。文部科学省が進める大学入試改革の目玉ともいえるが、問題構成などまだ決まっていないことが多く、不安に思う人も少なくないだろう。新テストはセンター試験から何が変わるのか、最新の取材をもとにポイントをまとめた。
センター試験から変わらないことも
まず、現在のセンター試験から変わらないことも少なくない。共通テストが実施される日程は1月中旬の2日間で、今とほぼ同じ。初の実施は21年1月になる。出題される教科・科目もはじめの4年間(20~23年度)は、センター試験と変えない。テストの結果は、大学入試センターから受験生が出願する大学に送られて入学者選抜に利用されるという流れも同じだ。
大きく変わることが決まっているのは3点だ。
国語と数学の一部で記述式を導入
1つ目は、「記述式」の導入だ。センター試験では、解答を与えられた選択肢から一つ選びマークシートに記入する方式だが、新テストでは国語(国語総合の範囲。ただし古文・漢文を除く)と数学(数学Ⅰの範囲)の問題の一部に記述式で解答する問題が導入される。
国語は、大問1問(小問3問)が記述式となる予定。記述する字数は最大で80~120文字程度の範囲で設定される。マーク式の試験とあわせて実施し、試験時間は100分(今は80分)になる見込み。数学の記述式問題は小問3問程度で、マーク式問題と同じ大問の中で出題され、式や考え方を書くことが求められる。試験時間は70分(今は60分)になりそうだ。狙いは、高校生に選択肢から正解を選ぶことばかりを重視した勉強をしてほしくないという国側の考えがある。高校生の側は、普段の授業や定期テストで、自分の考えを分かりやすく記述することを心掛けるとよいだろう。
マーク式でも新傾向の出題
2つ目は、マーク式で答える問題の見直しだ。17年度に実施された新テストの試行調査で(プレテスト)は、各教科で新傾向の問題が相次いだ。目立つのは、いくつかの資料をあわせて読んで答えを導く問題だ。場面設定がされた出題も多かった。授業で発表をしたり、日常生活で教科で学んだ知識を使ったりといった場面が多い。知識や解き方を覚えるだけでなく、使いこなせる力を試したいという出題の狙いがうかがえる。
ただ、21年1月の「本番」の出題がこうした新傾向の問題ばかりになることは考えにくい。限られた時間の試験で新傾向の問題や凝った問題ばかりが出題されると、受験生の多くが苦戦して差がつきにくくなり、順位付けが必要な入試には使いづらくなってしまうためだ。大学入試センターでは、新傾向の問題を出しながらも受験生の間で差がつくよう、バランスをとった出題を目指すという。
英語4技能を民間試験で測定
3つ目は、英語の4技能を測るために民間の資格・検定試験を利用することだ。
4技能とは、「読む」「聞く」「話す」「書く」。大学入試センター試験の英語で、直接能力を測っているのは「読む」「聞く」の2技能だ。「話す」「書く」の2技能も正しいアクセントを選ばせたり、語句を並び替えたりする問題によって間接的には測っているが、これらの力も直接測るために、「英検」や「GTEC」といった民間試験を国が認定して入試に活用する仕組みがつくられる。
具体的には、高校3年生の4~12月の間に受験生は「英語4技能」を測る民間試験を受ける。入試に使えるのは2度までだ。民間試験の結果を大学入試センターがとりまとめて、大学入学共通テストの成績とあわせて各大学に送るという流れが想定されている。
20~23年度は、大学入学共通テストの英語の試験が続くことも決まっており、国立大学の多くは共通テストの英語と民間試験の両方を受験生に課す考えだ。受験生の側は、高校1年生から4技能をバランスよく学ぶよう意識する必要がありそうだ。