アルトサックスのメンバー。見せ場のフレーズを立ち上がって演奏する

千葉県内有数の進学校として知られる小金高校。近年、活動の幅を大きく広げているのが吹奏楽部だ。昨夏は県吹奏楽コンクール(高校A部門)を勝ち抜き、9月の東関東大会に出場。創部51年目の快挙だった。(文・写真 青木美帆)

短時間集中で練習

高校吹奏楽の超強豪は、365日ほぼ休みなく長時間練習に励むところも少なくない。しかし、学業との両立が前提で塾通いの生徒も多い同部は、1週間に1日はオフを設け、放課後の練習時間も2時間足らずとごく短い。この時間は全体の合奏練習となるため、譜面を覚えたり、難しい箇所を反復練習したりする作業は、朝や昼、部活後に設けられた自由練習時間を活用することとなる。

例えば、トランペットは毎朝パート練習を実施。フルートは土曜日の全体練習前だ。そのほかのパートも各自の予定を確認し、空いている時間を見つけては練習時間をつくっている。朝が得意でないという遠藤香純さん(3年)は、部活後の1時間半をフル活用して個人練習。「毎日、練習の前に『この時間のうちに、これをできるようにする』と決めて、何も考えない時間をつくらないようにしている」と話す。

本音打ち明け、意思統一

部内で「伝説」と称される昨年度の3年生たちは、それまでの通例だった3年次4月の引退を覆し、偉業を成し遂げた。今年の3年生たちも先輩に続きたいとは思いつつも、「正直まだまだ発展途上」と部長の小林晴香さん(3年)は心細げだ。

その理由について遠藤さんは「急に(大会の)成績が上がったので、最近まで部員の心持ちにばらつきがあった」と説明する。昨年のように高いレベルを目指したい部員もいれば、従来の楽しさ重視のスタイルを好む部員も。自主練習の量にもかなり個人差がある。そんな状況を受けて4月の初め、3年生28人が各自の本当の気持ちを打ち明ける場を設けた。「それぞれいろんな悩みがあって大変だけど、私たちがやりたいこと、最終的に行きつきたいところは同じだとあらためて確認した」(小林さん)。すなわち、2年連続の東関東大会出場だ。

受験勉強と部活の両立への不安も大きいが、酒井美結さん(3年)は「先輩方も両立に悩みながら最後までやり抜いて、東関東まで連れて行ってくれた。負けないくらい、気持ちをしっかり入れてやっていきたい」と話す。

昨年度の3年生が掲げた「勇猛邁進(まいしん)」という言葉は、今年から部訓となった。吹奏楽部にしては、いささか勇ましいこの言葉の通り、恐れることなく、自らが見定めた目標に向かって進んでほしい。

2、3年生の部員
部活データ
1966年創部。部員50人(3年生28人、2年生22人、1年生未定)。目指すのは「人間味豊かな演奏」(顧問の中島正考先生)。昨年度の千葉県吹奏楽個人コンクール県大会金賞・理事長賞(根本実功)。