大学入試センターは3月14日、2020年度(21年1月)からセンター試験に替えて始める「大学入学共通テスト」の英語の出題内容を検討するための試行調査(プレテスト)の問題などを公表した。筆記(読解)試験、聞き取り(リスニング)試験とも具体的な場面を設定して、「英語を使う力」を測定することを重視した。一方、現行試験にある発音・アクセント問題は姿を消すなど、センター試験から問題構成は様変わりした。(西健太郎)

日常生活、授業など「自然な場面設定」めざす

文部科学省は、センター試験の英語に替えて20年度から英語4技能を測る民間の資格・検定試験を大学受験生に受けてもらい、結果を入試に活用する仕組みを始める。一方で、20~23年度は移行期間として共通テストでの英語の試験も、センター試験から問題構成を刷新して続ける方針だ。その出題内容を検討するための試行調査が2月中旬から3月初旬にかけて47都道府県の高校158校で実施され、2年生6303人が受けた。

大学入学共通テスト試行調査の英語読解問題

試行調査は、筆記試験(80分)、聞き取り試験(30分)ともマーク式で答える。問題作成にあたっては「実際のコミュニケーションを想定した明確な場面、目的、状況の設定を重視した。日常の場面に限らず、講義を聴くなど学習の場面も含め、自然な場面設定をめざした」(大学入試センターの大杉住子審議役)という。

飲食店の口コミサイトも題材に

筆記試験では、遊園地の混雑予想に関するウェブサイトを読ませて内容を理解できているかを尋ねたり、飲食店の口コミ投稿サイトを読ませて事実と投稿者の意見の区別できているかを聞く出題があった。授業でディベートやプレゼンテーションの準備をする設定で参考資料となる英文を読ませて情報を整理したり要約したりする力を測るなど、「発信」することを前提に読ませる設問も目立った。

大学入学共通テスト試行調査の英語読解問題

一方で、センター試験の筆記試験の定番の出題である、発音・アクセント・英文を完成させるための語句整序などを選択式で問う設問は出題されなかった。「発音問題などには『受験英語を助長する』という批判が専門家からある。民間試験の活用で、『話す』『書く』を(直接)評価する枠組みがあるので、(発音などの評価は)そちらに委ねるという議論が(出題者の中で)あった」(大杉氏)という。一方で、高校教員の中にも発音問題などの出題を求める声もあり、本番の問題構成は未定という。

「日本人の英語」聞く問題も

聞き取り試験でも、日常生活や大学の講義といった場面設定がされたほか、英語の読み上げ方法も変えた。センター試験の読み上げはアメリカ英語のみだが、試行調査ではイギリス人による英語や、日本人など英語を母語としない人による読み上げもあった。また、センター試験では、問題音声が2回読み上げられているが、プレテストでは受験者を2グループに分け、片方のグループは全ての問題を2回読み上げ、もう片方では一部の問題を1回だけ読み上げた。

大学入学共通テスト試行調査の英語聞き取り問題

「すべて選ばせる問題」正答率6.2%

大学入試センターは、半数程度の採点を終えた段階の設問ごとの正答率を速報値として明らかにした。正答率は10%未満から90%台まで幅広く分布しており、センター試験の正答率分布と大きな差はないという。最も正答率が低かったのは筆記が6.2%、聞き取りが3.2%。センター試験にはない、あてはまる選択肢をすべて選ばせる形式の設問などだった。センターによると、難易度が比較的高い問題でも正答率が予想以上によかったというが、各県の教育委員会が英語に力を入れた高校を実施校に選んだ可能性もあるとして、詳しく分析する。

大学入学共通テスト試行調査の英語聞き取り問題

聞き取り試験の読み上げ回数を変えた2グループの正答率は、「2回読み」のグループの正答率が10ポイント程度高い設問もあった一方で、読み上げ回数による差がほとんどない設問もあるという。正答率の最終集計や詳しい分析結果は5月までに公表する。

大学入試センターでは、今回の試行調査の結果もふまえて本番に向けた出題の検討を続け、今年秋には大学を会場として、本番と同様の構成・難易度のプレテストを実施する方針だ。