1989年から95年にかけて弁護士一家を殺害したり、地下鉄車内で猛毒をまいたりする事件を起こしたオウム真理教をめぐる全裁判が今年1月に終結した。
29人死亡、6500人被害
オウム真理教の教祖で「麻原彰晃」と名乗っていた松本智津夫死刑囚と信者は89年に教団を追及していた坂本堤弁護士一家を殺害する事件を起こし、94年には長野県松本市内で猛毒サリンをまいた。95年3月20日朝、東京都心の地下鉄日比谷線など3路線5車両でサリンをまき、13人が死亡、6200人以上が重軽症を負った。一連の事件では29人が亡くなり、国は6500人以上の被害者を確認している。
強制捜査から23年
地下鉄サリン事件で実行犯を車で送迎し、殺人罪などに問われた元オウム真理教信者、高橋克也被告の上告審で最高裁は今年1月、被告の上告を棄却、一、二審の無期懲役判決が確定した。これにより教団をめぐる刑事裁判は95年の強制捜査から約23年を経て、事実上全て終結した。
一連の事件で192人が裁判にかけられ、13事件で有罪となった松本死刑囚を含む計13人の死刑、6人の無期懲役刑が確定。刑事訴訟法の規定で共犯者の刑が確定するまでは死刑を執行しないことが慣例となっており、今後は執行が焦点となる。
一連の犯行を指示したとみられる教祖の松本死刑囚は、一審の途中から意味のある言葉を発しなくなり、弁護人との意思疎通も困難になっていた。そのため、なぜ若い信者たちが凶行に走ったのかなど事件の核心部分、真相は依然として闇に包まれた部分が多い。
【memo/オウム真理教】 1984年、松本智津夫死刑囚が東京でヨガサークル「オウム神仙の会」を設立、87年にオウム真理教に改称した。教団は後継団体とされる「アレフ」、アレフから分派し「ひかりの輪」など3団体に分かれ、現在も活動を続けている。3団体の国内信者は計約1650人、ロシアにも約460人の信者がおり、資産は計10億円以上とされる。