NHK杯全国高校放送コンテストで優勝6回、準優勝4回という輝かしい成績を誇る兵庫・小野高校放送部。部員は、夏の甲子園の開・閉会式の司会にほぼ毎年、選ばれている。校内放送や学校行事の運営、地元イベントの司会など、学校内外で幅広く活躍し、技術を上達させている。
(文・写真 白井邦彦)

年に2回あるコミュニティー放送局「エフエムみっきぃ」でのDJに向け、練習に励む1年生部員たち

取材で世界が広がる

放送部の活動はアナウンス、朗読、テレビドキュメンタリーやドラマの制作など多岐にわたるが、全員が番組制作に携わるのが特徴だ。例えば、朗読を中心に活動する部員が、ドキュメンタリー制作ではカメラを担当する。ドキュメント班の番組ディレクターも毎日の発声練習を欠かさない。
 今西ひなのさん(1年)は「アナウンサー志望で小学4年生から小野高校放送部に入ると決めていた。でも、今はドキュメンタリー制作で使うカメラなど機材にも興味がある」と言う。
 ドキュメント班は、地元の鉄道を廃線の危機から救うためにご当地アイドルになった女性を取材した。取材を通して広がる人とのつながりや、新しい世界に面白さを感じたという。
 顧問の大江真理先生は「放送部の基本はドキュメント」と力を込める。「他人と関わりながら作っていくのが放送の原点。一般の生徒や地域の方々の協力を得ないと作れないドキュメントには、放送の基本が詰まっている」

兵庫県高校総合文化祭で独自に行われるDJ部門。昼放送が充実する小野高校はこの部門も強い (小野高校提供)

昼休みは「修業」の場

文化祭や体育祭、地域イベントの司会など、活動の場は数多い。毎日昼に20分流す校内放送は、部員全員が交代で作る。
 朗読担当の田中泉帆(みずほ)さん(2年)は「どう話せば原稿が相手にうまく伝わるかを考え、原稿の内容で声のトーンを変えている。昼放送はその感覚を養うための貴重な場所」と言う。アナウンス担当の杉本菜瑠(なる)さん(1年)は「私の声は明るい原稿が合っていると思うので、昼放送のネタも明るい話題を探す」と話す。
 多くの生徒が食いつく番組構成にも力を入れる。テレビ局勤務を目指す大橋佳浩君(2年)は「単に部員の好みで選んだ曲をかけても響かない。週1回は、生徒へのアンケートを基にランキング形式で曲を流す」と言う。
 昼放送が、放送の技術を学ぶ「修業」の場になっている。

全ての学校行事に関わる
顧 問 大江真理先生 文化祭や体育祭、コーラス大会、卒業式など全ての学校行事で、放送部は企画の段階から関わります。生徒会やほかに発表する部との打ち合わせから、台本の作成、当日の司会進行、音響、映像投影、録画記録まで、まとめて引き受けています。頼まれた原稿を単に読んでいるのではないところが私たちのこだわりです。ほかの部のコンサートや各学年行事などにも、放送部側から率先して関わっています。

初心忘れず、あいさつしっかり
副部長 山本莉央(りお)さん(2年)

 放送部の活動を通して、先生や在校生はもちろん、卒業生や地域の方などいろんな人と関わります。そのときに大事なのは、感謝の気持ちを忘れないこと。取材や司会を「させていただいている」という初心を常に持つことが大切です。先輩から、あいさつをしっかりするよう言われるのも、そのためだと思います。

 

部活データ
 部員55人(3年生18人、2年生20人、1年生17人)。NHK杯全国高校放送コンテスト初出場は1973年。2014年までに29回出場。同コンテスト兵庫県大会では、14年まで13年連続総合優勝。モットーは「短時間集中」。年に2度、1年生がコミュニティー放送局「エフエムみっきぃ」でDJを務める。