トランプ米大統領はエルサレムをイスラエルの首都と認定、テルアビブにある米大使館の移転を指示した。エルサレムの帰属をめぐっては、米国の歴代政権は和平の頓挫を懸念して「イスラエルとパレスチナが交渉で決めるべき」としてきており、中東政策の抜本的な転換となる。国際社会は米国を批判している。

帰属が中東和平の核心

Q 何が問題なの?

イスラエルはエルサレム全域を「首都」と主張し、首相府や国会などの政府機関を置く。一方、イスラエルと対立するパレスチナは東エルサレムを将来の独立国家の首都と位置づけており、エルサレムの帰属は中東和平交渉の核心の一つだ。国際社会でエルサレムをイスラエルの首都と承認する国は米国以外になく、各国大使館は商都テルアビブにある。米国に追随する国も出そうだ。
 トランプ氏の首都認定は、米国がイスラエルによる主張を認め、占領の歴史を正当化することになる。米国は暗礁に乗り上げている中東和平交渉の仲介を試みてきたが、トランプ氏は「公正な仲介者」としての信頼を失い、和平交渉の早期再開は絶望的となった。

「強い指導者」演出?

Qなぜ首都認定を?

トランプ氏は2016年の大統領選で大使館移転を表明している。その公約を実現することで、外国の圧力を意に介さない「強い指導者」を誇示する狙いがある。また、20年大統領選をにらみ、キリスト教保守派やユダヤ系財閥などの支持をつなぎ止めるための公約実現という側面もありそうだ。

 

国際社会は一斉に批判

Q国際社会の反応は?

エルサレム「首都」認定をイスラエルは歓迎する一方、イスラム諸国は猛反発。アラブ連盟はカイロで緊急会合を開き「地域と世界の平和や安定への深刻な脅威になる」との声明を発表した。また、外交問題で米国と歩調を合わせることが多い英国を含む欧州5カ国も異議を唱える共同声明を出し、米国の孤立が鮮明となっている。
 国連総会(193カ国)の緊急特別会合は、米政府を批判し認定の撤回を求める決議案を賛成128、反対9、棄権35の賛成多数で採択した。決議に拘束力はないが、米国は考えが認められない場合は、国連への拠出金の削減を示唆している。