第70回全日本バレーボール高校選手権(春高バレー)女子決勝が1月8日、東京体育館で行われた。金蘭会(大阪)が東九州龍谷(大分)をストレートで破り、3大会ぶり2度目の頂点に立った。(文・田中夕子、写真・中村博之)

まさかのインハイ敗退 

優勝候補筆頭と思われていた昨夏のインターハイで、まさかの初戦敗退。「何もできないまま、何もしないまま終わった試合の敗因は明確だった」と主将の林琴奈(3年)は振り返る。「試合の入り方がものすごく悪かった。何も盛り上がらないまま試合に入ってそのまま終わってしまいました」
 主軸となる2年生5人が8月の世界ユース代表。個々の技術力は高く、全国制覇は決して遠い目標ではない。だが、そこに見えない隙が生まれた、と池条義則監督は言う。「私も含め、選手たちも『このチームは力がある』と勘違いしていた。どこかにおごりがあったのかもしれません」

林が試合をリードした

監督の叱咤激励 初心に戻って練習

もう一度初心に戻って、春高で全国制覇を目指す――。そのために池条監督は「ヘタクソなんだからもっと練習しなさい」と鼓舞し、選手たちは厳しい練習に必死で向き合った。そんなチームの中心が主将でもあり、コートに入るレギュラー選手の中で唯一の3年生でもある林だ。

自身も1年の頃からレギュラーとして春高や多くの全国大会を経験したが、「ただ思い切りやればいいと思っていた」という1、2年時とは違い、最上級生となった今は背負うプレッシャーは異なり、監督からも厳しく叱咤される。苦しいと感じることは数えきれないほどにあったが、その積み重ねた日々が春高を戦う力になった。

チームを背負ってきた林

 

チームを背負う責任果たす

林にとっては3年連続のセンターコート。1、2年時は準決勝で敗れ、決勝に進むことすらできなかったが、3年目、最後の春高でようやくたどり着いた決勝。試合巧者の東九州龍谷に対しても「まず自分が崩れちゃダメだと思っていた」と言うように、サーブで狙われても正確にレシーブを返し、苦しい場面では自身のスパイクで得点をもぎ取る。そんな主将を、池条監督も「口数が多いわけではないが、よく耐えて頑張った。来年は林が抜けてどうしよう、と思うぐらいの存在」と称えた。

笑顔と涙で優勝を分かち合う

試合の入り方に反省しか残らなかったインターハイから半年、春高は常に高い集中力を持って戦い続けることができた。笑顔と涙で優勝の喜びを仲間と分かち合い、林が言った。「悔しい、で終わるのではなくて次に切り替えて最後の春高で優勝することができたのが、本当に嬉しいです」。三度目の正直でようやく手にした金メダルが輝いた。

 
【チームデータ】
2007年創部。部員27人(3年生13人、2年生10人、1年生4人)。15年に春高バレー初制覇。組織的な守備力に定評がある。VリーグやU17、U19日本代表に在学時から選手を派遣するだけでもなく、卒業生も多く選出されている。