大学入学テスト試行調査の国語の問題、解答用紙、記述式の自己採点用紙

大学入試センターは12月4日、センター試験に代わり2020年度(21年1月)から実施する「大学入学共通テスト(新テスト)」の試行調査(プレテスト)の問題と高校生の正答率(速報値)などを公表した。国語と数学で記述式問題を出題したほか、他教科のマークシート式で解答する問題も、センター試験でみられなかった新傾向の出題を多く取り入れた。ただし、試行調査は新傾向問題を示すことを重視したため、問題構成や分量は本番とは異なるという。入試センターでは、今回の問題ごとの正答率などをふまえ、本番の試験の問題構成や内容などを検討する。(西健太郎)

全国1889校の高校2・3年生が参加

入試センターによると、試行調査は11月に全国の高校・中等教育学校の38%にあたる1889校(公立1205校、国立16校、私立668校)が参加して実施し、高校2~3年生のべ約17万8000人が受けた。「国語」「数学Ⅰ・A」(以上の科目は高校2・3年生が対象)「数学Ⅱ・B」「世界史B」「日本史B」「地理B」「現代社会」「物理」「化学」「生物」「地学」(以上は原則高校3年生が対象)の11科目を実施し、学校ごとに1~数科目を受けた。

大学入学共通テストの試行調査が全国で行われた(11月13日、東京都立桜修館中等教育学校)

文部科学省は新テストを知識・技能を評価しつつ、思考力・判断力・表現力の評価を中心に評価する試験にする考え。そのため、国語と数学で記述式問題を出題し、他教科を含むマーク式の出題方針も見直す方針を掲げている。今回の試行調査の出題にもその方針が反映された。

国語で「部活動規約」出題

例えば、国語の第1問は記述式の小問3問から成り、解答字数はそれぞれ50字以内、25字以内、80字以上120字以内。生徒会の部活動規約と、規約をめぐる生徒たちと先生の会話文、部活動をめぐる表やグラフなどの資料を題材にした。今年5月に公表されたモデル問題に続き、センター試験では出題されていない「実用文」を出題した。他のマーク式の問題も出題方法が様変わりした。特徴は、複数の題材を組み合わせたことだ。評論文は、路地をテーマにした文章と表・写真を合わせて読み解く形式。文学作品「幸福な王子」を踏まえてつくられた小説を題材にした出題や、源氏物語の同じ場面を扱った2つの古文と関連する注釈書を読ませる出題などもあった。

数学はTシャツ販売や道路渋滞など

数学は、日常生活を題材にし、「数学の良さ」を実感させることを意図して出題したといい、文化祭でのTシャツ販売や、観光客の消費額、高速道路の渋滞状況などを題材にした。記述式は小問3問を出題。コンピューターのグラフ表示ソフトを扱った大問では、グラフの頂点の動きを、数式を使って記述させた。

歴史で教科書にない図やグラフも

世界史では、日本に中国からもたらされた「金印」を題材にした問題があった。次期学習指導要領で日本史と世界史を合わせた科目「歴史総合」が創設されることを意識した出題だ。日本史では、中世までの日本の会議や意思決定について生徒が調査学習をする場面を設定した出題や、授業で博物館に行く設定の出題などがあった。生徒が設定した課題について調査や発表をする「探求学習」への転換を意識した出題といえる。教科書に載っていないグラフや図版を扱った問題もあった。入試センターによると、初見の題材を扱った問題も、教科書で学んだことを基に考えて解けるよう工夫したという。

理科でも、探究活動を意識し、実験を扱った問題を各科目で出題した。実験の手順を考えさせる出題もあった。国語や数学など8科目で、正答の数を示さずに、あてはまる選択肢を全て選ばせる出題もあった。センター試験ではなかった出題形式だ。

全て選べ…でも正答1つ、高校生苦戦

入試センターはマーク式問題の小問ごとの正答率(約7割の答案の採点を終えた速報値)も明らかにした。正答率0.9%から87%まで幅広かった。センター試験でも正答率は1割弱から9割以上まで散らばりがあるという。数学や理科で数値を書かせる問題の正答率が低かったほか、「全て選べ」としながら正答が一つだった地理の問題の正答率は22%だった。新傾向問題でも絵画資料を選ばせる世界史の問題を76%が正答するなど、出題者の予想以上に出来が良かった問題もあったという。国語と数学の記述式問題は未採点。問題の公表後に民間企業に委託して採点作業に入るという。

本番の難易度は「バランスよく出題」

試行調査の11科目中8科目でセンター試験よりページが多かった半面、小問数は8科目でセンター試験より少なかった。入試センターによると、今回の試行調査は、本番の問題構成や内容を検討することなどが狙い。そのため、センター試験のような想定平均点を設定せずに、国語の全ての大問で複数の素材を読み解くことを求めるなど、新傾向の出題や、じっくり考えることが必要な問題を多く出題した。入試センターの大杉住子審議役は「知識の質を問う問題、思考力・表現力・判断力を問う問題が新テストの狙い。(センター試験と)難易度を変えた意識はないが、今までの受験の手法では解けない問題もあった。(本番では)難易度の高い問題から低い問題までバランスよく出題する」と話している。

英語の試行調査は来年2月に実施する。来年11月には、本番同様の問題構成で、高校3年生10万人が受けるプレテストを実施する。