トレーニングから常に「3-4-3」システムで臨んでいる

東久留米総合(東京)サッカー部は、都立高ながら、前身の久留米高校時代を含めて計4回の全国高校サッカー選手権出場経験を持つ。2年前から大胆に布陣を変更。超が付くほど攻撃的な選手配置を採用し、攻めのプレースタイルへの改革に挑戦している。(文・写真 茂野聡士)

攻撃に人数を割く

「3-4-3で行こう!」。練習中盤のミニゲームで、選手から声が飛んだ。

サッカーの試合に臨む上で欠かせないのは「フォーメーション」という選手配置だ。「3-4-3」とは、DFが3人、MFが4人、FWが3人という意味で、「超攻撃的な布陣」として知られている。

高校に限らずプロなどでも失点を極力避けるために、主に守備で力を発揮するDFを4人にすることが多い。もし3バックを用いても、1列前のMFを増やすケースが大半だ。しかし同校がDFを1人削って増やしたのは、最前線のFWなのだ。

同校は長年にわたって標準的な「4-4-2」を採用してきた。しかし2年前に「3-4-3」を採用すると、都内の高校が年間を通じて戦うTリーグで2位に入るなど躍進した。

特殊な布陣で戦う理由を、主将の下川晴(3年)は「サイドに人数が多く、攻撃に人数がかけられるからです」と説明する。強豪校に身体能力で及ばない分、「それぞれが流動的に動くことで相手を混乱させる」狙いがある。

先輩のプレー動画で勉強

一方、この布陣を幼少のころから経験している選手は少ない。昨年からAチームでプレーしている小川大河(3年)は「ポジショニングなどの部分で本当に難しい」と語る。それでも「2年前の先輩たちのプレーを動画で確認することも多いです」と、プレーするだけでなく映像も見ることで日々学ぼうとしている。

練習のミニゲーム中には、前線と中盤の選手が神出鬼没の動きと連係で得点を奪う場面があった。これには多くの部員から「グッド!」の声が上がった。難易度の高い布陣を磨き上げた時、目標である「全国で勝てるチーム」が見えてくる。

 

 ポゼッションゲーム
縦20メートル、横15メートルほどの狭いスペースの中で、攻守に分かれてボールを回し続ける。正確かつ強いパスを通すとともに、適切な判断力も磨かれる

 

シュート練習
味方のポストプレーを受けてからの基本的なシュートだけでなく、2対2の状況を作り出すなど、実戦に出来る限り近い状況を作って決定力を向上している

 

フィジカル練習
上半身の入れ方で、相手より優位な体勢の取り方を意識づける。ボールを使わない状況、もしくは手でボールを扱ったりするなど、さまざまな工夫を凝らしている

ポジションにとらわれない(斎藤登監督)

 

勝利することは一番大事ですが、私たちのチームは育成年代ということもあって「良いサッカーをして勝つ」「育てて勝つ」という考えをキーワードにしています。1人の選手の良い部分が「1」あるとすれば、それを「2、3、4、……」と増やしていきたいと思っています。

2年前に「3-4-3」を用いた時は、それぞれのポジションに選手たちを当てはめていましたが、今年は選手それぞれの能力を最大限に生かしていきたい。選手それぞれがポジションにとらわれないで役割を果たすようなプレーができるのが理想ですね。

 

 

 
【TEAM DATA】
 2009年創部。部員181人(3年生85人、2年生90人。1年生は未定。マネジャー6人)。練習は週6日、約2時間20分。主なOBは元日本代表の中村憲剛(川崎フロンターレ)。集合写真は学校提供。