学年を越えて集った「スーパーコーヒーカップ」企画の有志メンバー

文化祭で人気の出し物としてこの数年で全国に広がったコーヒーカップ。2012年、元祖となるコーヒーカップを制作したのが東京・筑波大学附属高校だ。5年を経た今年の同校の文化祭(9月910日)では、1~3年生の有志生徒25人がさらに進化した「スーパーコーヒーカップ」を制作し、来場者を楽しませた。(文・中田宗孝、写真・田部翔太)

16人乗りコーヒーカップ「三段階回ります」

 
最大で16人が乗れる。生徒4~8人がかりで2人乗りのコーヒーカップ8基を手動で回した

文化祭2日目。校庭に置かれた全長約8メートルの「スーパーコーヒーカップ」を動かす準備が整った。実は初日に運転開始から30分で動かなくなるトラブルが発生し、生徒たちは1日かけて不具合部分の修理にあたっていた。企画責任者の高橋航一朗君(3年)ら4人の運転役の生徒が「よーい、スタート!」の号令で鉄パイプのハンドルを押すと、コーヒーカップは大きな円を描き始める。

鉄パイプで組んだ土台には大型の円盤が2つ。その上にある各4つの中型の円盤にコーヒーカップを設置。客16人を乗せた8基のコーヒーカップが一度に回る光景はまさに圧巻だ。各コーヒーカップが回り、4つの中型円盤もそれぞれ回り、さらに大型円盤が乗る土台までもが回転する。遊園地のコーヒーカップに限りなく近い動きをする同校の「三段回転構造」のコーヒーカップは文化祭では前代未聞だ。

巨大なコーヒーカップを体験しようと、客たちが続々と列を作る様子に、高橋君は胸をなでおろした。「よく完成までたどり着けたなと言うのが率直な気持ち。回ってくれてホッとしました」。2日間で約400人が乗車した。

設計図作りで目指したのはスムーズな回転

文化祭のコーヒーカップは二段階回転が一般的だ。「今まで誰も挑戦していない三段階回るコーヒーカップを作ろう」。2012年に全国的な反響を呼んだ元祖コーヒーカップを制作したクラスの担任だった山田研也先生の発案で、学年やクラスの枠を越えた25人が文化祭の有志団体企画として集まった。4月からコーヒーカップを三段階回すためのアイデアを話し合ったり、制作に必要な鉄パイプ、コンパネといった材料を集めたりした。7月からは、鉄パイプの組み上げ、土台や木材を加工してカップ作りに取り掛かった。

コーヒーカップの設計は、氏家奏子さん(3年)が担当。もの作りが好きで、中学のときに所属した技術部で図面作成の経験もあったが、文化祭では前例のない制作物の設計に苦労したという。「何度も熟考したのが、車輪と鉄パイプを繋げる部分の設計。スムーズな回転を実現させるために、車輪と鉄パイプの間に直方体の小さい木材を噛ませることを思いつきました」

緻密に設計された図面

試運転は文化祭当日 来年も制作に意欲

メンバーの予定がなかなか合わず、夏休みの制作は常に人手不足に悩まされた。そんな時、忙しい上級生に代わり、メンバーに指示を出して奮闘したのが筒井涼輔君(1年)だ。友人にも急場のヘルプを頼み、作業の遅れを取り戻した。完成したスーパーコーヒーカップを初めて運転できたのは、文化祭当日、開会後の午前中だった。「有志メンバーではない、多くの先輩や友人たち、先生方の飛び込みの協力もあって、おそらく全国の高校で初となる、進化したコーヒーカップを作ることができました。来年はこれを超えるコーヒーカップを作ります!」(筒井君)